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映画のレビュー

【ネタバレ注意】映画『TAR ター』のレビュー|映画を見た感想は「1人の女性の盛栄と凋落、生き方を反芻する物語」

東京都にお住いの30歳女性(IT・通信系:総務事務)が2023年6月頃に「映画館」で見た映画『TAR ター』のレビューをご紹介します。

映画を見た感想や見どころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、映画を見る前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。

この映画の見どころ

  • ケイト・ブランシェット渾身の演技
  • 3時間におよぶ没入体験
  • 難解!だがそこが面白い

映画『TAR ター』を見ようと思ったきっかけ

観ようと思ったきっかけはケイト・ブランシェット、主演女優さんです。

彼女の演技は演じるキャラクターによって180度変わり、実在しない人物でもリアリティーをもって緻密につくられてくるところが魅力的です。

今回のTARという作品では実在した人物をモデルにされているとまことしやかに噂されており、いくつもの問題をはらんだ主人公です。

本国アメリカでの放映後、インタビューに答えていた彼女が「とても疲労してエネルギーを使った。

これで引退も考えるほどだった。

」と言っていたのを見て、絶対に観なくてはという使命感に駆られました。

映画『TAR ター』の内容

1人の女性指揮者の隆盛と凋落を描いた作品。

世界的にも有名なオーケストラで女性としてはじめて首席指揮者の地位についた主人公、ター。

実力と努力でその地位まで上り詰め、コンサートにもメディアにも引っ張りだこで名声をものにした。

コンマス女性のパートナーとの仲も上々で血はつながらなくとも可愛い娘もいる。

ときどき精神は不安定になり薬を服用しながらも、人生最良の日々を送っていた。

しかしそんな中かつて関わった若手女性指揮者の訃報が入る。

彼女の自死の原因にはターも深く関わっていると懸疑される。

最初はそれほど気にも留めなかった事項にメディアの手が入り噂がはびこり、彼女の人生はボロボロと零れ落ちていく。

作品情報

  • ジャンル:ドラマ
  • 製作国:アメリカ
  • 製作年:2022
  • 公開年月日:2023年5月12日
  • 上映時間:159分
  • 製作会社:Emjag=Standard Film Company=Focus Features
  • 配給:ギャガ
  • 公式サイト:https://gaga.ne.jp/TAR/

映画『TAR ター』の見どころをネタバレ覚悟で解説

私がネタバレ覚悟で解説したい映画『TAR ター』の見どころは大きく3つです。

この映画の見どころ

  • ケイト・ブランシェット渾身の演技
  • 3時間におよぶ没入体験
  • 難解!だがそこが面白い

ケイト・ブランシェット渾身の演技

素のケイト・ブランシェットは快活で聡明でチャーミングですが、本作のTARは絶妙に鼻につく人物でした。

鼻につくといっても、分かりやすく嫌な奴ではなく、ケイトが演じるからこそ肯定されているような不思議な感覚に陥りました。

頼りがいがあり地位も名誉もあって魅力的に見えてきてしまうので不思議でした。

惹かれてしまうのは一種の洗脳だと思いました。

このような人物は身近にたくさん存在していて、もしかすると映画館の場にも「どきっ」となった方がいるかもしれません。

自分の人生や選択に自信たっぷりであり、しかしその背景には努力と情熱があるからこそというのがよく伝わってくるようなキャラクターでした。

3時間におよぶ没入体験

私は上映時間を把握しておらず映画館に赴いたのですが、レイトショーに行った帰りには終電の時間になっており大変驚きました。

近年の映画には珍しい、3時間にもおよぶ超大作でした。

長い作品であり、アクション性などはないのですが入り込めるような工夫がこまめに練り込まれている作品ゆえ、没入してみられるのではないかと思いました。

この映画をどのようなジャンルにしてよいのか迷いますが、ヒューマンドラマというよりもミステリーやスリラーにも寄っていると思います。

どういう意味だと考えながら追っていたり、主人公の緊迫感や焦燥感が伝わってくるような描写が観るものを飽きさせないようになっているのだと思いました。

難解!だがそこが面白い

この映画は単刀直入に言えば「難解な映画」です。

あらゆるフラグが方々にまかれ、視聴者は置いて行かれないようにと必死にかき集めるものの最終的にそのフラグは回収されず、放っておかれるまま、という映画だと思います。

纏め方も衝撃の脱線結果だと思います。

謎が多い作品で視聴者への挑戦を提示しているものだと感じましたし、「あなたはどう思う?」という疑問の投げかけを常にされているような感覚に陥る映画でした。

1人の女性の生き方や考え方、性格の形成などから自身や身の回りの人物の人生についても反芻させられるような、不思議な映画体験となりました。

映画『TAR ター』を見終わった感想

クライマックスに向けてどんどんと気持ちが高まり緊張感も強まる中、意外な終わり方をしたことで呆然となりました。

今まで積み重なってきたある問題の結末が描かれるのではなく、TARの成功人生の終焉と第二の人生の始まりが同時に描かれていました。

その描かれ方も新鮮で「どうしてこうなった」と思わず声が出そうになりました。

「え?」となること必須だと思います。

他に視聴した方の中でも終わり方は物議を醸しており、私は皮肉だととらえたのですがそうでなくリスタートととらえた方もいて面白いと思いました。

あまりにも謎が多い物語なので観る人によって全くことなる印象になると思いますが、そこがこの映画の面白さだと思います。

映画『TAR ター』で印象に残った名言

私が映画『TAR ター』を見て特に印象に残った名言です。

「主人公ターのセリフ初見の時はターのキャラクター性やケイトの演技もあって「なるほど」と納得させられてしまうのですが、のちにこの何気ない一言も波乱を生んでいきます」のセリフ

魂がSNSで形作られている

映画『TAR ター』の評価や口コミ

他の方が映画『TAR ター』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。

恐らく製作陣すら、この性的倒錯者である主人公の内面には共通した認識が無いのであろうという事が伝わってきて、不憫さすら感じる映画でした。恐らく伝えたいこととは真逆なのかもしれませんが、逆にそのことが浮き彫りになってしまっていたように見えました。結局私たちは遺伝子的に問題があるか、もしくは後付けでそういう主義を貫いているのか分からないタイプの人間たちの内面は描くことが不可能なほど理解していなんだなという気がしました。完全に行き過ぎてしまったジェンダーレスの世界を描いた怖いSFという感じがします。正直ジェンダーレスというものそのものが幻想なのではないかという事すら感じさせる面白い世界観でした。ジェンダーレスと言いつつ男が犯しそうな失敗を、ただ男の恰好をさせた才人にやらせているだけの話にも感じて、身体が女の人間がこういうタイプの雑な失敗をするかなぁというのがちょっと違和感があり、そこがまさに私が指摘したい製作陣の混乱という部分ですね。実際生態が良く分からないからテレコで書いているだけ、という短絡さが笑えて来ます。「性的な眼で見られたくない」という理由で、キム・ベイシンガーが授賞式なんかでも一切スカートをはきませんでしたが、そういうのともちょっと違う表現のパンツスーツ姿ですね。もちろんその恰好はケイト・ブランシェットはめちゃくちゃ似合います。最高峰であるベルリンフィルに指揮者として就任したという設定。ベルリンフィルと言えば世界最高峰で来日公演を行う時のチケットはいい席だと5万以上します。その指揮者という設定がまぁケイトブランシェットは似合います。そして、なんとも表現することが難しかったであろうこの主人公を、そこにいるとしか思えない、というレベルで演じたのは驚異的ですね。これは役者冥利に尽きるんじゃないでしょうか。誰も理解していないこの人物の内面を表現し、更にはそれを「実話」だと勘違いさせるほどの説得力を持って演じる彼女の凄味を感じるためだけの映画と言ってもいいです。いろんなチャレンジをしている映画ですが、結局こういう人物の内面どころが行動すら誰も理解できていない・・・なぜなら「そんな人間はいないから」ということがパッケージとして描かれたある意味凄い映画です。続きを読む
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ベルリン・フィルの主席指揮者の地位と名声を手に入れたリディア・ターがセクハラ・パワハラにより教え子が自殺したことから全てを失っていく様を描いており、キャンセルカルチャーやSNSが浸透した現代ならではの内容でした。確かにセクハラ・パワハラはいけませんし、ましてや相手が自殺するような過度のハラスメントはあってはならないと思いますが、それを以て過去の全ての偉業を無かったことにされるのはどうかと思いました。音楽家としてこれ以上はない位のポジションまで上り詰めていただけに、一旦そのキャリアに綻びが出ると皆んなが一斉に攻撃して彼女を貶める様子を見て気の毒に思ったほどです。ターによるセクハラ・パワハラの描写が無く公平な評価ができていないだけかもしれませんが。
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内容は特に・・・という感じなのだがマーラーのアダージェットのリハーサルシーンだけは良かった、リハーサルなので仕方ないが中断せず演奏を続けて欲しいと思ったし、エルガーの協奏曲含めリハーサル、演奏をもっと増やせばクラシックファンは満足できたのにと思う。指揮者の話なのだから映画の音楽にもクラシックを使った方が効果的で良かったと思うし、そういう点では中途半端な映画だった。
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男社会で勝ち抜いてきた女性にどんな苦悩があっただろうか。評価のバイアスを完全に排除することは難しいし、欲や私情も絡んでくる。その苦悩を生きたであろう当の主人公も所詮同じ人間であって、同じ過ちを犯してしまう。性に関する目に見えない社会の構造は、加害者だけでなく被害者によっても再生産されてしまう。だからこそ、目に見えないルールを捉えようとする態度が求められよう。最後はクラシックとは離れたシーンで終わる。過去の評価や囚われから解放され、新たな章を始めようとしたのかもしれない。しかし、そこで待ち受けていたのは金魚鉢から金魚を選ぶ自分というお馴染みの構図であった。最後の俗っぽいアジアのイメージを見せることは、映画の作者が意図を持ってなされたのか、あるいは、無意識に偏見を再生産したものなのか、、私たちは所詮同じ人間であって、同じ過ちを犯してしまう。激痛のマッサージに耐えてなお、凝り固まった頭を揉みほぐすのは難しい。続きを読む
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本作は、傲慢とか、弱さとか、周りが見えていないとか、自分が一番かわいいとか、努力とか、物事を前向きに受け取るとか、性別に関係ないところで、人間としての醜さ、悲哀を物語っていると思った。この人間としての苦しみに加えて、性の社会的関係性という昨今の問題がのっかっている。最後に、アジア某国と思われる地域でのゲーム音楽の演奏会で指揮をとる主人公は、音楽家としての復活に進んでいると理解したい(ひいては主人公の魂の復活になる)。すべてを失った主人公に残ったものは、音楽のすばらしさを届けたいという前向き気持ちだったと思う。また、細切れの場面一つ一つが主人公の内心を表現していた。それは人生というものの不可解、そのものであったと思う。そして、もの凄く長いセリフを淀みなく話すケイト・ブランシェットの演技は圧巻でした。ちなみに、前作の「ナイトメア・アリー」での演技は妖艶と妖怪を足して2で割るものでした。続きを読む
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みなさんの映画を見た感想が面白いですね!

おわりに

私が映画『TAR ター』を見た感想や見どころをネタバレ覚悟で解説してきましたが、「面白い」と感じられた方はぜひ見てください。

次に見たいと思っている映画は『生きる LIVING』です。

黒澤明監督の名作映画「生きる」をイギリスでリメイクした作品です。

主人公の人となりや生活、ガンに冒され余命宣告される部分は原作とも同じように描かれ、舞台は第2次世界大戦後のロンドンであり、イギリス紳士が主人公として描かれるとのことで興味を持っています。

主人公の紳士を演じるビル・ナイの表情が大きく映し出されたポスターにも惹かれます。

イギリスと日本、舞台は違えどどことなく類似した文化ももつ2国。

どのようにリメイクされているのか観てみたいです。







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