東京都にお住まいの51歳の男性(専門コンサル系:経営コンサルタント)が2022年12月頃に「紙の本」で読んだ小説『不毛地帯(一)』のレビューをご紹介します。
小説の感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説しております。
小説を読む前にその面白さを知りたい方や、評価や口コミが気になる方は参考にしてください。
目次
小説『不毛地帯(一)』を読もうと思ったきっかけ
もともと山崎豊子さんの小説が好きで、このシリーズについては読んでいなかったため、年末を利用して長編を読もうと思いました。
また、ウクライナ戦争が継続している中、かつての日本人捕虜とロシアの関係にも興味があったため、この小説の内容に惹かれました。
ボリュームは相応にありますが、話が流れるように展開していくので、没頭して読み進めていくことになると思います。
実際に私も3日程度で完読することができました。
小説『不毛地帯(一)』の内容
前半は、第二次世界大戦後にロシアの捕虜として10年以上にわたり、シベリアに抑留され、厳しい重労働を課された赤裸々な体験記です。
後半はやっとの思いで帰国した後、商社マンとして日本経済の発展に尽力する主人公の姿が描かれています。
物語を通して、正義感が強く聡明な主人公の生き様が描かれており、周囲を固める脇役や敵対するキャラクターも個性的です。
また、後半の商社時代では世界を股にかけ活躍する主人公の行動がとても痛快です。
作品情報
- 著者:山崎豊子
- ISBN:9784101104409
- 出版社:新潮社
- 判型:文庫
- ページ数:656ページ
- 定価:950円(本体)
- 発行年月日:2009年03月
- 発売日:2009年03月17日
小説『不毛地帯(一)』の読みどころをネタバレ覚悟で解説
私がネタバレ覚悟で解説したい小説『不毛地帯(一)』の読みどころは、主に3つです。
この小説の読みどころ
- 商社の裏話
- ロシアという国の本質
- 日本の軍隊出身者の能力
商社の裏話
この物語は戦後の伊藤忠商事をモデルにしています。
綿系中心だった同社が、日本に石油源をもたらすべく、イランの油田の権利を取得しに行く様子が描かれています。
その過程で、イランの国家中枢との駆け引きやさまざまな攻防が展開され、主人公がその経験と戦略、そして行動力によって突破していきます。
最終ビジネスが成功したシーンは、物語の途中であっても深い感動を与えます。
ロシアという国の本質
主人公は他の帰国者を優先する結果、戦後直後に満州に残ってロシア軍の捕虜となり、シベリアで厳しい労働を強いられます。
十分な食事も与えられず、同胞が衰弱していく中で、彼は生き残ります。
ここでは、捕虜でありながら自分たちに取り入れたものは自分の国のものとみなすロシア独特の思想が垣間見え、恐ろしさが感じられます。
日本の軍隊出身者の能力
元軍の参謀である主人公は、数々の統率力や戦略策定能力を発揮します。
それはシベリアでの厳しい生活を耐え抜く力につながるばかりでなく、帰国後の商社での勤務でも際立っています。
駆け引きや世界との交流など、様々な場面でその能力を発揮します。
それによって彼は他の商社マンを凌駕し、物語の会社を全国区に引き上げ、世界でも名を轟かせます。
そして最終的に、その力が衰退した社長を引退させる原動力ともなります。
小説『不毛地帯(一)』を読み終えた感想
非常に壮大でスケール感のある時代小説だと思いました。
特にウクライナ情勢を鑑みると、ロシアという国の本質が見えてきて、大変恐ろしい気持ちになります。
また、商社時代におけるロッキード事件やフォード事件など、名前だけかすかに知っていた事象も詳しく語られており、知識が深まります。
最終的に、主人公の心に残るシベリア抑留の切ない記憶とそれを引きずりながら生きていく様子から、戦争の恐ろしさを再認識できました。
小説『不毛地帯(一)』で印象に残った名言
小説『不毛地帯(一)』を読み、特に印象に残った名言を紹介します。
「鮫島辰三」のセリフ
「よくも、よくも」
小説『不毛地帯(一)』の評価や口コミ
他の方が小説『不毛地帯(一)』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
小説『不毛地帯(一)』(今年18冊目)
シベリア抑留を11年にも及び耐え抜き、帰国後第二の人生として商社マンの道を選ぶ。主人公の壹岐が今後どう考え行動するのか続きが楽しみだ。— ちづか (@chiduka_mizu) May 19, 2011
小説「不毛地帯」というシベリア強制労働や戦後の企業戦士を鋭く描いた名作があるんだけど読む前の第一印象がツルペタが浮かんだのはナイショ
— ロヒ (@rohi1010) February 21, 2013
残り少なくなったBNCとZUBROWKAを飲んでしまう 小山薫堂さんの第一小説集とやらをスイスイと読んでしまう
眠れない!
芋焼酎飲みつつ、2冊目で足踏みしている不毛地帯にいってみる— よしあら ちえこ (@shiaraeda) September 20, 2011
やっと読み終えた不毛地帯(一)に物申す!巻末の作者インタビュー、もちろん拝読いたします。だから、今後の小説の顛末を含む内容を一巻の巻末に、載せないで下さい!
— みっち (@nonnontigerco) August 3, 2011
壱岐正みたいな人がいればもっと日本は良くなるんだろうな~。でもいないんだろうな~。自分が壱岐正になることは難しそうです。。
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若かりし頃を思い出しての再読。山崎豊子の力作。モデルは瀬島隆三氏。日本の商社の凄さを知らされる。
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状態も良く早く届いたので良かったです!
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父が体験者であった、生存中は気にもかけなかったが、ウクライナ戦争がきっかけで関連書物を読み始めた。今のロシアと当時のソ連、いろいろと考えさせられる。
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今までは、シベリア抑留といえば、たぶん下級兵の経験談が多かったのでは。今回の主人公は大本営の作戦部の少佐で、戦犯として、シベリア抑留された。なんと、11年間抑留。抑留生活中、意外だったのは、同じ日本人抑留者なのに、ソビエトにおべっかを使うようにして、優遇された者がいたこと。また、ソビエトの非人道的行為にはあきれさせられた。全体としては、フィクションとの設定だが、山崎氏はいつも取材しての作品で、かなり事実が含まれているように思える。今まで、想像しなかったことだけに、勉強させられた。
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みなさんの小説を読んだ感想が面白いですね!
おわりに
私が小説『不毛地帯(一)』を読んだ感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説してきました。
楽しいと感じられた方はぜひ、読んでみてください。
次に読む予定の小説は『村上海賊の娘(一)』です。
瀬戸内で活躍する村上海賊の娘、景の痛快な物語。