千葉県にお住いの40歳男性(流通・小売系:物流センターの検品担当)が2022年5月頃に「紙の本」で読んだ小説『おもいでエマノン』のレビューをご紹介します。
小説を見た感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、小説を見る前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
小説『おもいでエマノン』を読もうと思ったきっかけ
終わりの見えないパンデミックが続いているこのご時世、どうしても遠方に旅行に行くチャンスが巡ってきません。
そんな中でせめて読書という手段を通してでも、見知らぬ土地を歩いてあるような気分になってみたいと思っています。
当て所ない旅の風景を描くことにかけては定評のある梶尾真治さん、その代表作とも言えるのがこの「エマノン」シリーズ。
2022年現在で全6巻まで刊行されているライフワークで、1983年5月に徳間書店から出版された記念すべき第1作を手に取ってみました。
小説『おもいでエマノン』の内容
1960年代の半ば、大学に通っていた「ぼく」でしたが前々から好きだった女の子にフラれてしまいショックから立ち直れません。
アルバイト代がそこそこ貯まっていたために、この機会に思いきって旅行先で散財することにします。
特に行き先も決めないままで九州地方へ向かうフェリーに乗り込んだところ、タバコのマナーが原因で若い女性と話し込むことに。
「エマノン」と名乗った彼女の驚くべき告白とは、そして旅の終わりに待ち受けているドラマとは?
小説『おもいでエマノン』の作品情報
作品情報
- 出版社:徳間書店
- 著者:梶尾真治
- 定価:726円(税込)
- 発行年月:2013年12月06日
- ページ数:384ページ
- ISBN:9784198937713
- 言語:日本語
- 公式サイト:https://www.tokuma.jp/book/b503986.html
小説『おもいでエマノン』のあらすじ
異国風の彫りの深い顔立ち。
すんなりと伸びきった肢体。
ジーンズにナップ・サック。
ながい髪、おおきな瞳、そしてわずかなそばかす―。
彼女はエマノン、ぼくが出会った不思議な少女。
彼女は言った、「私は地球に生命が発生してから現在までのことを総て記憶しているのよ」と。
彼女の口から紡ぎだされる、母から娘へと伝えられたさまざまな『地球』のおもいでたち。
地球の意思に導かれ、旅をする彼女の軌跡を描く人気シリーズの原点。
小説『おもいでエマノン』の読みどころをネタバレ覚悟で解説
私がネタバレ覚悟で解説したい小説『おもいでエマノン』の読みどころは大きく3つです。
この小説の読みどころ
- 年齢不詳で掴みどころがないヒロイン
- 名作文学とレア本をズラリと陳列
- 小さな体に大きな宿命を背負う
年齢不詳で掴みどころがないヒロイン
上に着ているのは糸のほつれたセーター、下に履いているのは継ぎ接ぎだらけのジーンズ、肩に掛けているのはぼろぼろのバックパック。
何とも色気のないファッションのエマノンですが、その横顔は酸いも甘いも噛み分ける成熟した女性のものです。
そうかと思えば鼻の頭から目もとにかけてのそばかすが、年端もいかない少女のように彼女を印象付けています。
その眼差しには全てを受け流す強い意志が宿っていて、誰にも追い付くことが出来ないような後ろ姿も心に残ることでしょう。
名作文学とレア本をズラリと陳列
空想科学小説の先駆け的な存在であるH・G・ウェルズから、第二次世界大戦中に水平線の彼方に消えたサン=テグジュペリまで、古今東西のベストセラー作家、さらには伝説的な小説家にまつわる薀蓄やこぼれ話がたっぷりと盛り込まれていました。
60歳で4度目のヒューゴー賞に輝いたロバート・A・ハインライン など、SF界の大先輩へのリスペクトも忘れていません。
カート・シオドマクの「ハウザーの記憶」など、今では入手困難となった稀こう本も出てくるのでコレクターには堪りませんね。
小さな体に大きな宿命を背負う
「エマノン」をアルファベット表記にすると「EMANON」、綴りを逆さまにすると「no name」、日本語に訳すると「名前無し」。
本名さえ思い出すことができないエマノンですが、その華奢な身体の中には膨大な記憶が秘められています。
ベトナム戦争やアポロ計画、カラーテレビにサージェントペッパーなどリアルタイムで体験した世代には懐かしい響きです。
人類が誕生してから築いてきた文明の数々に圧倒されつつ、エマノンが託されたバトンの重さにも想いを馳せてみてください。
小説『おもいでエマノン』を読み終わった感想
自分の名前さえ持たないひとりの女性と、一緒に冒険をしているような気持ちに浸ることができました。
親きょうだいもいなく、親類縁者もいなく、恋人もいなく、友人もいない、寄る辺のなさを漂わせているエマノンですが、孤独を受け流すような強さも伝わってきます。
旅先で出会ってどんなに交流を深めた相手とも、やがては別れを迎えることが決まっているのが切ないです。
それぞれの心の奥底で思い出が生き続けていくことと、今でも変わらずに彼女がどこかを放浪していることは間違いありません。
小説『おもいでエマノン』で印象に残った名言
私が小説『おもいでエマノン』を読んで特に印象に残った名言です。
「エマノン」のセリフ
名前なんてどうでもいい、ただの記号だから
小説『おもいでエマノン』の評価や口コミ
他の方が小説『おもいでエマノン』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
ちなみにおもいでエマノンは見開きが多いので読むなら完全に紙がいいです。
ある意味、あれは一つの完成系ですよ!!
内容からすると10ページかそこらでも行けそうな話。でも演出やらが上手すぎて。めっちゃいいんですよ。
セリフじゃないんですよ!!
表情や間や風景。上手すぎます!!— ALI三世 (@aliyandesuyo) January 23, 2023
「おもいでマシン」やっと買えました。
やっぱりカジジン先生( @kajioshinji3223 )のショートショートは面白いし、思ったよりもどんでん返しが多いのも好きです。この元ネタの「カジジンエッセイ」も毎月楽しみに読んでいます。写真は「おもいで」繋がり。#おもいでマシン #おもいでエマノン pic.twitter.com/rSKsdiUkSw— 福山源太 (@gen1197) June 9, 2022
図書館でたまたま見つけて、今日、読破。#エマノン と名乗る、謎の #美少女 を中心に、淡々と物語が展開していく。良 #SF 作品。📖
早速、続編の #さすらいエマノン
を予約しました。🐱 pic.twitter.com/CbYLNVoBaN— たま駅長💛🐰 (@tama_ekichou) March 26, 2019
おわりに
私が小説『おもいでエマノン』を読んだ感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説してきましたが、「面白い」と感じられた方はぜひ読んでください。
次に読みたいと思っている小説は『異形家の食卓』です。
個性派のSF作家、田中啓文さんによって2000年に発表された短編集が気になっています。
グロテスクな描写が賛否両論を呼んでいるようですが、その博識ぶりと豊かな想像力は梶尾真治にも負けていません。