東京都にお住いの49歳女性(金融・保険系:パート)が2022年2月頃に読んだ『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』のレビューをご紹介します。
本書の概要や内容をわかりやすく要約してまとめておりますので、書籍を読んで学んだことや感想、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』を購入したきっかけ
アメリカでドナルド・トランプ氏は絶大な人気を誇り、ついには大統領にまでなりました。
トランプ氏を支持していた人の多くが、ラスティベルトと呼ばれる地域に住んでいる白人たちです。
昔は白人で特権階級だったのに、今は落ちぶれてヒルビリーと呼ばれるようになった白人が、トランプ氏の考えに共感しているのです。
そんなヒルビリーの白人がどんな人なのか、全く情報がなかった私は、新聞広告でこの本がアメリカでベストセラーになっていることを知り、購入することにしました。
『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』の概要
「ヒルビリー」とは、アメリカ中西部に住む貧しい白人を侮蔑して呼ぶ時の言い方で、「エレジー」は哀歌、という意味です。
著者のヴァンス氏自身が、まさにアパラチア山脈付近に住む貧しい白人で、この本は彼の自叙伝です。
彼は荒んだ母親、貧しい家庭環境にもかかわらず、自分の努力で海兵隊に入り、地方の大学に入学をし、そして名門大学イェールの法学部にも入学するのです。
イェールで頭角を表した彼は有名な法律事務所の弁護士となり、美しい妻を持ち、成功者になります。
これは現代のアメリカン・ドリームです。
『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』の基本情報
基本情報
- 出版社:光文社
- 著者:J・D・ヴァンス
- 定価:本体1,800円+税
- 発行年月:2017年03月14日
- ページ数:418ページ
- ISBN:4334039790
- 言語:日本語
- 公式サイト:https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334039790
『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』の目次
目次
- アパラチア 貧困という故郷―崇拝すべき男たち、避けられる不都合な事実
- 中流に移住したヒルビリーたち―1950年代、工場とそして豊かさを求めて
- 追いかけてくる貧困、壊れはじめた家族―暴力、アルコール、薬物…場違いな白人たち
- スラム化する郊外―現実を見ない住民たち
- 家族の中の、果てのない諍い―下がる成績、不健康な子どもたち
- 次々と変わる父親たち―そして、実の父親との再会
- 支えてくれた祖父の死―悪化する母の薬物依存、失われた逃げ場
- 狼に育てられる子どもたち―生徒をむしばむ家庭生活
- 私を変えた祖母との3年間―安定した日々、与えてくれた希望
- 海兵隊での日々―学習性無力感からの脱出
- 白人労働者がオバマを嫌う理由―オハイオ州立大学入試で見えてきたこと
- イェール大学ロースクールの変わり種―エリートの世界で感じた葛藤と、自分の気質
- 裕福な人たちは何を持っているのか?―成功者たちの社会習慣、ルールのちがうゲーム
- 自分のなかの怪物との闘い―逆境的児童期体験(ACE)
- 何がヒルビリーを救うのか?―本当の問題は家庭内で起こっている
『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』のYouTube(ユーチューブ)
『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』についてYouTube(ユーチューブ)でわかりやすく解説してくれている動画がないか調べてみました。
「石田衣良」さんが細かく解説してくれているので、本を読む時間がない方はこちらのYouTube(ユーチューブ)動画をおすすめします。
『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』から学んだことの要約とまとめ
『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』から私が学んだポイントは大きく3つの内容です。
私が学んだこと
- どんなにひどい家庭環境でも、自分を見失わない
- 軍隊生活は辛いけど、人間を成長させてくれる
- イェール大学の学歴を手に入れたことが成功への第一歩
人間はどんなに貧しい境遇であろうと、どんなに悪い家庭環境であっても、自分が努力すれば成功への道が開ける、というメッセージをこの本から得ました。
そしてつい先日、著者のヴァンス氏が地元オハイオで、トランプ氏の支持を得て共和党から出馬し、上院議員に当選しました。
底辺のヒルビリーだった彼がアメリカン・ドリームである政治家にまでなったということは、この本がいかに人々に大きな影響を与えたかという証明でしょう。
どんなにひどい家庭環境でも、自分を見失わない
著者ヴァンスは、白人が多いアパラチア山脈に住んでいました。
かつては炭鉱の町として栄えていましたが、今は寂れてしまい、ラスティベルト(錆びた地域)と呼ばれる場所です。
彼は薬物中毒の母親に育てられました。
この母親は看護師ですが、尿検査の時に薬物反応が出ては困ると思い、ヴァンスに尿をくれないか、すり替えるから、というようなダメ母親です。
そんな劣悪な家庭環境でしたが、彼は勉強やアルバイトも真面目にこなして頑張り続けました。
軍隊生活は辛いけど、人間を成長させてくれる
彼はお金がなかったので、大学に行くことができませんが、軍隊に入れば大学に無料で行けることを知りました。
そこで彼はアメリカ海兵隊に入隊します。
アメリカ軍の中でも海兵隊の訓練は過酷なことで有名ですが、彼はそこで大きな人間的成長を遂げるのです。
彼は軍隊で時間厳守、身支度、清掃、そして規律を学び、そして実際の戦場の前線であるイラクにも派兵されます。
この軍隊での経験は、彼の心身を成長させただけでなく、彼の将来で大きなリスペクトを人々から得るきっかけとなりました。
アメリカ人は軍隊経験者に敬意を払う文化だからです。
イェール大学の学歴を手に入れたことが成功への第一歩
そして彼は名門大学イエール大学に入学することになりました。
彼自身は、彼が特別頭がよかったからではなく、貧しかったから選ばれたと言っています。
アメリカの大学にはアファーマティブアクションという、黒人や貧しい人々に優先的に入学許可を与える制度があります。
その制度のおかげで彼は名門大学生となり、有名な法律事務所の面接に合格し、お金も地位も名誉も美しい奥さんも手に入れます。
そして彼は多くのヒルビリーたちにこう言いたいのです。
自分の境遇に絶望しなくてもいいんだよ、頑張れば自分のように成功することができるんだよ、と。
『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』の感想
アメリカの白人は優雅なイメージでしたが、麻薬がはびこり貧困に喘ぐ白人がいることを初めて知りました。
ヴァンスはこう言っています、「オバマの上品さが苛立たせる」と。
オバマ氏は黒人ですが弁護士として成功し、彼の話す英語は正しく優雅です。
しかしヴァンスの周りのヒルビリーたちの英語は特徴的で、品がない話し方をします。
黒人なのに金持ちで品がある、それ自体が鼻につく、というのが、トランプ氏を有する共和党支持者の本音か、と初めて知りました。
『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』の評価や口コミ
他の方が『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』を読んでどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
『ヒルビリー・エレジー』#読了
白人労働者階層として生まれた著者の回想記。母親に振り回されて不安な成長期を過ごしなから、祖母や姉をはじめとした周囲に支えられ、自信をつけて成功に至る過程を描く。白人貧困層の実情やメンタリティを伝え、アメリカ国内で分断された二つの社会を考察する。 pic.twitter.com/DcWWY5n7TU
— ikawa.arise (@ikawa_arise) April 27, 2022
J.D.ヴァンス『ヒルビリー・エレジー』
ヒルビリー(白人労働者階層)コミュニティで生まれ育った筆者の自伝。負の連鎖から脱却することの難しさを痛感した。筆者は現在オハイオ州上院議員選に出馬表明していて、過去の反トランプ発言を撤回したと知って、なんともいえない気持ちに… #読了 pic.twitter.com/1qksZVzAsY— chiii (@chiii3___) August 13, 2021
『ヒルビリー・エレジー』J・D・ヴァンス #読了
貧困から逃れられない白人労働者層について。
辛い負の連鎖だった。でも環境に問題があることを認識しつつ、それを責めて終わりにしなかったのが凄い。
はたから見たら凶暴な婆ちゃんだけど祖母との絆は泣けた。安心できる人間関係がいかに重要か痛感。 pic.twitter.com/jD5HGE79Ar— みやこ@読書 (@miyacobook) July 5, 2022
みなさん本書を読んで学んだことが多いみたいですね!
おわりに
著者ヴァンスの育った環境は劣悪で、親の薬物中毒をはじめ、アルバイト先のパートタイマーは仕事にこなかったり、いい加減な人間だらけです。
しかも全員が言い訳をすることにヴァンスは腹をたてています。
家の物を壊してさらに環境を悪くしている薬物中毒者、仕事をサボって注意したら逆ギレするパートタイマー、問題があるのはその人自身なのに言い訳をして反省しないのです。
この本からは、自分の非を認めて反省し、自分を変える努力をすることで、人生を好転させることができることが分かります。