埼玉県にお住いの55歳女性(サービス系:葬儀関係)が2022年11月頃に「映画館」で見た映画『ある男』のレビューをご紹介します。
映画を見た感想や見どころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、映画を見る前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
映画『ある男』を見ようと思ったきっかけ
原作者の平野啓一郎さんの「マチネの終わりに」と、その映画がとても好きだったので是非こちらも観てみたいと思ったからです。
さらに調べると監督の石川慶さんの「蜜蜂と遠雷」が素晴らしかったことも思い出し、これはもう期待しかありません。
原作を先に読むか、それとも映画を観終わるまで我慢するか、ちょっと迷って、とりあえず文庫本を買い、映画初日に観るまで封印して待ちました。
結果的にそれは大正解だったと思っています。
映画『ある男』の内容
宮崎の田舎町で小さな文房具店を営んでいた里枝(安藤サクラ)は息子を連れて離婚し、横浜から出戻ってきました。
彼女は時折店にふらりと現れて画材を買っていく男・大祐(窪田正孝)に恋をしたのです。
次第に心を開いていく2人は結婚し、4年後には娘も生まれて穏やかに暮らしていました。
しかしある日、林業の仕事をしていた大祐が事故で急逝してしまいます。
悲しみも癒えないままに訪れたその一周忌、里枝は絶縁していたという大祐の兄に連絡し、法要に参加してもらうことになったのですが…。
やってきた兄は、祭壇の遺影を見て言いました。
「これは、大祐じゃない…」…それこそがこの物語の本当の始まりだったのです。
映画『ある男』の作品情報
作品情報
- 監督:石川慶
- 脚本:向井康介
- 原作:平野啓一郎
- キャスト/出演者:
- 妻夫木聡
- 安藤サクラ
- 窪田正孝
- 清野菜名
- 眞島秀和
- 小籔千豊
- 坂元愛登
- 山口美也子
- きたろう
- カトウシンスケ
- 河合優実
- でんでん
- 仲野太賀
- 真木よう子
- 柄本明
- 主題歌:‐
- 日本公開日:2022年11月18日
- 上映時間:121分
- 公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/a-man/
映画『ある男』のあらすじ
亡くなった夫・大祐の身元調査をしてほしいと弁護士の城戸に依頼する谷口里枝。大祐の兄から彼女は、夫が素性を偽っていたことを聞く。早速、調査に乗り出した城戸は、大祐の正体とその理由に迫っていく。
映画『ある男』の予告編
映画『ある男』の見どころをネタバレ覚悟で解説
私がネタバレ覚悟で解説したい映画『ある男』の見どころは大きく3つです。
この映画の見どころ
- ”大祐”の過去
- 弁護士・城戸(妻夫木聡)の人生
- ”戸籍交換ブローカー”の小見浦(柄本明)の存在
”大祐”の過去
里枝の暮らす田舎町にふらりと現れた”大祐”は人手不足の林業の仕事につき、真面目に働いていました。
彼があまり他人に話さないその過去は、伊香保温泉の老舗の旅館の次男坊だったということ。
家族との折り合いが悪くて出奔し、ほうぼうを転々とした結果この町にやってきたのだということだったのですが…。
しかし、その誠実な人柄に惹かれた里枝は彼と結婚し、新たに娘が生まれました。
そんな大祐の突然の事故死に打ちひしがれていた里枝でしたが、さらなる衝撃が彼女を襲います。
一周忌に招いた大祐の兄が、その遺影を見て「これは大祐じゃない」と言ったのです。
では”彼”は一体誰なのか?!里枝は前夫との離婚で世話になった弁護士の城戸(妻夫木聡)を頼り、大祐の身元を調査してもらうことにしました。
そして結果は彼女の想像をはるかに超えたものだったのです。
弁護士・城戸(妻夫木聡)の人生
弁護士の城戸は優しい物腰と誠実な人柄がにじみ出る態度で、里枝にも敬意を払って接してくれる人でしたが、彼自身もまた様々な問題を抱えて生きていました。
優秀な成績で学業を修め、弁護士として事務所を構えて立派な仕事をし、美しい妻と可愛い息子と立派なマンションで暮らしていましたが、彼の心の中にはぬぐい切れないコンプレックスがあったのです。
城戸は日本に帰化していましたが、在日三世でした。
そして生粋の日本人のエリート家庭でそだった妻の香織(真木よう子)やその両親とのやりとりで、複雑な齟齬を感じるようになっていたのです。
自分の中にいる”もう一人の自分”のようなものを感じていて、大祐が抱えていた闇を解き明かしていくと同時に自分の内面とも向き合うことになっていきました。
”戸籍交換ブローカー”の小見浦(柄本明)の存在
”ある男”が大祐として生き、大祐として死んだ、その裏側には”戸籍交換”という犯罪が絡んでいました。
自分の人生をリセットしたい、と願う者たちが、互いの戸籍を交換し、全くの他人として人生を生きなおしていたのです。
そして”ある男”は伊香保出身の大祐として生き、本物の大祐はまた違う誰かの名前と戸籍で名古屋で暮らしていることを城戸は突き止めました。
その彼らの戸籍ロンダリングを引き受けていた老人が現在服役中の”小見浦”でした。
彼は大阪で戸籍交換を求める人間に、彼らが望む”人生”を売っていたのです。
面会室で対峙した城戸に対してまるでなぞかけのように、からかうように話しかけていた小見浦の言葉は、事件の本質を指すとともに城戸の心にも突き刺さっていったのです。
映画『ある男』を見終わった感想
”上質のミステリー”でした。
映画の冒頭でさらりと始まるごく普通の生活の裏側にあった、それぞれの人生。
懸命に隠して生きようとしていた”ある男”たちの姿が切なくて、悲しくて、狂おしく、しかしそれを淡々と描いているところがとても面白かったです。
冒頭と、ラストシーンのつながりと、城戸が直面した最後の衝撃は、映画でなければ味わえなかったな、と思っています。
少し難しい部分もありましたが、小説を読むことで十分補完されました。
これは一度目に見たときの衝撃が一番楽しめる作品です。できれば原作未読で味わっていただきたいですね。
映画『ある男』で印象に残った名言
私が映画『ある男』を見て特に印象に残った名言です。
「里枝(安藤サクラ)」のセリフ
「私は一体誰の人生と一緒に生きてたんでしょうね…?」
映画『ある男』の評価や口コミ
他の方が映画『ある男』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
ほんまに何回撮ってもくしゃみ出そうやった···
ある男 が噂しとるんかも···抽象的なタイトルには説得力がある!
話が面白くて、カンロ国際映画祭でも最優秀脚本賞を受賞されたこの作品。
安藤サクラさんのお芝居毎回言うけどすきだぁぁ。ぜひ〜!#ある男 pic.twitter.com/4knXnfoPjI
— 緋水綾 ひすいりょう (@hisuiryo_off) January 22, 2023
愛した夫は一体誰なのか。その謎の真相を探るヒューマンミステリー。
謎解き要素の強さよりもそれぞれの思いや社会問題の描写が主に描かれており、自分の人生について思わず考えてしまう。
ラストの主人公のセリフにはこの映画の全てが込められていて秀逸!#映画好きと繋がりたい pic.twitter.com/PVupRpAJfI— 司 (@yamadatukasa1) January 17, 2023
友人の奥様が法律監修の映画「ある男」を観ました。事故死した夫の戸籍が別人のものだったということを知った妻が、妻夫木くん演じる弁護士の協力のもと調査を行い真実が判明していくという話なのですが、弁護士が闇深で良かったです。壮大な身元調査、弁護士報酬いくらだったんだろう?
— 弁護士 渥美 陽子 (@atsumilaw) January 21, 2023
おわりに
私が映画『ある男』を見た感想や見どころをネタバレ覚悟で解説してきましたが、「面白い」と感じられた方はぜひ見てください。
次に見たいと思っている映画は『ラーゲリより愛をこめて』です。
二宮和也さん主演、瀬々敬久監督の映画で、実話をもとにした第二次世界大戦後のシベリア抑留の物語です。
二宮和也さんの演技が好きなので楽しみです!