京都府にお住いの38歳女性(主婦)が2022年11月頃に「Amazon Prime Video」で見た映画『ファーザー』のレビューをご紹介します。
映画を見た感想や見どころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、映画を見る前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
映画『ファーザー』を見ようと思ったきっかけ
映画好きの声優・内山昂輝さんがラジオで、最近見て面白かった映画としてお勧めしていたからです。
内山さんの勧める映画は私の好みに合っているものが多く、今回の『ファーザー』については意外な展開が多く、
ただの家族をテーマにした映画ではないと紹介されていて、興味をひかれました。
ネットニュースや作品情報を調べた際にも、アンソニー・ホプキンスの最高傑作という形で紹介されている記事が複数ヒットしたことから、
映画好きとして、これは絶対に見ておかなくてはという気持ちにさせられました。
映画『ファーザー』の内容
主人公は、アンソニー・ホプキンス演じるアンソニーという認知症を患う高齢の男性です。
アンソニーには娘・アンがいますが、既に結婚しており夫と2人で外国に住む予定があります。
アンは高齢の父親を置いて行くことはできず、アンソニーの生活補助のために介護人を紹介するのですが…。
気難しく、プライドが高い彼は、アンが紹介する介護人を強い口調で責めたり、泥棒扱いして次々に追い出してしまうのです。
次第に、アンソニーは、現実に起こっていないことを現実だと勘違いしたり、娘であるアンの顔まで正しく認識できなくなります。
彼は、必死に正気を保とうと努力ようとするのですが、老いと認知症の進行がそれを阻み、周囲の人たちから孤立していくことになるのです。
映画『ファーザー』の作品情報
作品情報
- 監督:フローリアン・ゼレール
- 脚本:フローリアン・ゼレール、クリストファー・ハンプトン
- 原作:フローリアン・ゼレール『Le Père 父』
- キャスト/出演者:
- アンソニー・ホプキンス
- オリヴィア・コールマン
- マーク・ゲイティス
- イモージェン・プーツ
- 主題歌:‐
- 日本公開日:2021年5月14日
- 上映時間:97分
- 公式サイト:https://cinerack.jp/thefather/
映画『ファーザー』のあらすじ
ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニーは記憶が薄れ始めていたが、娘のアンが手配する介護人を拒否していた。 そんな中、アンから… ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニーは記憶が薄れ始めていたが、娘のアンが手配する介護人を拒否していた。 そんな中、アンから新しい恋人とパリで暮らすと告げられショックを受ける。
映画『ファーザー』の予告編
映画『ファーザー』の見どころをネタバレ覚悟で解説
私がネタバレ覚悟で解説したい映画『ファーザー』の見どころは大きく3つです。
この映画の見どころ
- 認知症患者から見た世界はまるでホラー映画のよう
- 抗えない「老い」と「病気」の残酷さ
- 孤立していく主人公、主人公の周囲の人間、それぞれの悲哀
認知症患者から見た世界はまるでホラー映画のよう
認知症患者からの視点で見た世界というものを、ここまできちんと想像したことがありませんでしたが、アンソニーから見た日常の世界は、まるでホラー映画かサスペンス映画のようでした。
彼は、介護人や娘と会う度に別人のような顔に見えてしまい、相手が話した内容も誤った形で受け取り、どうしても正しい内容を理解することができないのです。
しかもそういったことについて、自分で気をつけようとしてもどうにもできないというのは、本当に恐ろしいことだと思います。
抗えない「老い」と「病気」の残酷さ
この作品の特に悲しく、残酷なところはアンソニー自身が、改善しようと努力してもどうにもならない、どうにもできないというところです。
老いも、病気も、どんなに抗おうとしても、アンソニーが正気を保とうとしても意味がなく、どんどん症状が悪化していきます。
しかも、そんな彼の内面の葛藤や言葉にしきれないほどの苦しみは、周囲には理解されません。
そして、最後にアンソニーは、病気と老いの進行により、あんなに愛していた娘のことさえ、忘れてしまうことになるのです。
孤立していく主人公、主人公の周囲の人間、それぞれの悲哀
自分がどんなに「これが真実だ」と訴えても、世界の誰にも理解されないというのは恐ろしいことだと思います。
アンソニーは、味方だと思っていた娘さえも、自分を拒否したり、自分の考えを理解してくれなくなっていきます。
その恐怖と哀しみが、よりアンソニーを侵食していくのですが……。
この映画では、アンソニーにどんなに熱心かつ丁寧に真実を伝えても理解してもらえない、毎回話した内容を誤って受け取られる周囲の人間の悲哀も描いています。
認知症患者、家族、両方の悲哀がとてもリアルかつ切なく描かれているのです。
映画『ファーザー』を見終わった感想
亡くなった私の祖父も、アンソニーと同じく認知症を患っていました。
もともと、祖父は穏やかな性格でしたし、認知症と診断を受けた後も、家族や介護士の方に冷たく当たることもなかったので、アンソニーほど孤立することはなく一生を終えました。
それでも「何度も同じことを聞く」「事実を誤って認識する」ということがあり、一緒に住んで世話をしていた祖母や母は、苛立つことも少なくなかったようです。
私は障害者の方々を支援する施設で働いていたことがあり、何度も同じことを聞かれることや誤った認知について、多少慣れているところがあったので、祖父と接していても、落ち着いていられたのですが、
そういった経験が無い、祖母と母には理解することが難しかったのではないかと思います。
認知症の患者をテーマにした映画はこれまでもありましたが、認知症の患者視点でここまでリアルに描いた作品は初めてではないでしょうか。
映画作品としてはもちろん、認知症、認知の歪みを含む障害がある方への理解を深めるという意味でも、重い価値のある作品であると思いました。
映画『ファーザー』で印象に残った名言
私が映画『ファーザー』を見て特に印象に残った名言です。
「アンソニー」のセリフ
「何が起きているんだ」
老いと認知症が進み、自分がなぜ施設に入れられたのか、
自身が置かれている状況が理解できず混乱した場面で発した言葉です。
映画『ファーザー』の評価や口コミ
他の方が映画『ファーザー』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
認知症を患った人の世界の見え方を「体感」する作品
観ていてこんなに混乱する映画は初めてでした全ての葉を失っていくようだ
アンソニーの言葉と子どものように泣きじゃくる姿がどうしようもなく悲しかった
苦悩しつつも懸命に寄り添う娘の姿が丁寧に描かれているのも良かったです pic.twitter.com/lqxOQK8U6R— Takae🍿 (@takae_movie) January 8, 2023
#ファーザー
認知症を患っている父親からの視点で描かれており、何が現実で、どこまでが空想の世界?!と冒頭から混乱😵
本人も何がどうなっているかと分からず、家族さえ信頼できなくなってしまう不安と孤独な苦しい世界😭
A.ホプキンスの演技引き込まれながら、深く考えさせられる作品✨ pic.twitter.com/Ke5iQqonMo— 古き良きかな (@furukiyokikana) January 3, 2023
『#ファーザー』を観た。
認知症に蝕まれていく父と、それを取り巻く家族と関係者の話。
一体何が現実なのかの判断や、時間感覚や人の識別が難しくなっていく様がリアルに描かれており、この病気の恐ろしさが真に迫ってくる。
アンソニー・ホプキンスの名演がすごい。
★★★★★#映画 pic.twitter.com/f7CLTCE5xM— 有賀弘幸 (@ariga8hiroyuki) January 12, 2023
おわりに
私が映画『ファーザー』を見た感想や見どころをネタバレ覚悟で解説してきましたが、「面白い」と感じられた方はぜひ見てください。
次に見たいと思っている映画は『星の子』です。
怪しげな宗教に心を奪われた両親を持つ、中学生の女の子を主人公にした映画なので、今の時代に必要なメッセージを期待しています。