愛知県にお住いの43歳の女性(医療系:医療事務)が、2022年7月頃に「紙の本」で読んだ小説『カーテンコール!』のレビューをご紹介します。
小説の感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説していますので、小説を読む前にその面白さを知りたい方、評価や口コミが気になる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
小説『カーテンコール!』を読もうと思ったきっかけ
まず、本の帯紙に「あなたは素晴らしい」というテーマが書かれているのを見て、そんな言葉を掲げる主人公がどのような人物なのか興味を抱きました。
コミュニケーションに難がある人、寝坊癖のある人、オタクなど、生きていく上で不器用な大学生の成長が描かれており、読むことで自分も励まされ、生きることの意味を学べるのではないかと思うようになりました。
さらに、「涙盛」という表現も帯紙に記されており、感動を求めて読書をしたいと考えていた私にはぴったりな内容でしたので、読む決断をしました。
小説『カーテンコール!』の内容
閉校が決まった大学の最後の卒業生たちが目前に控える謎解きの合宿。
何とか全員を卒業させようという学園理事長の企てです。
性同一性障害、ナルコレプシー、起立性調節障害、カフェイン依存、拒食症、過食症、自傷行為など、誰もが罹患する可能性のある心の病が小説の中で登場します。
単位が足りず卒業できない可能性のある彼女たちを、糾弾するように言いつつ、理事長が真心から向き合い励ます。
その結果、全員が卒業することに成功した物語です。
作品情報
- 著:加納朋子
- ISBN:9784101022512
- 出版社:新潮社
- 判型:文庫
- ページ数:352ページ
- 定価:670円(本体)
- 発行年月日:2020年09月
- 発売日:2020年08月28日
- 国際分類コード【Thema(シーマ)】1:FB
- 国際分類コード【Thema(シーマ)】2:1FPJ
小説『カーテンコール!』の読みどころをネタバレ覚悟で解説
私がネタバレ覚悟で解説する小説『カーテンコール!』の読みどころは大きく3つあります。
この小説の読みどころ
- 性同一性障害を患う女学生と学園理事長の孫娘、中学生の頃の出会い
- 祖母の突然の病に泣くあなた、その許し
- 理事長の死についての穏やかな語り、自らの姉を自死で失った過去
性同一性障害を患う女学生と学園理事長の孫娘、中学生の頃の出会い
性同一性障害を患う中学生の桃花は、塾で「ミエちゃん」という女の子に出会います。
その少女は、中学校の制服をスカートではなくズボンを選択しています。
その理由は義足を使用している足を隠すためです。
二人は、少しずつ仲良くなりますが、順調だった交友関係が突然途絶えてしまいます。
その後、桃花が入学した高校は「萌木女学園高校」。
この高校は廃校予定の大学の付属高校で、桃花はそのまま萌木女学園大学に進みます。
卒業が単位不足のため延びてしまった桃花は、理事長が開催する補講合宿に参加します。
その場で中学生の頃塾で知り合った「ミエちゃん」が実は理事長の孫娘であることを知ります。
祖母の突然の病に泣くあなた、その許し
人が倒れるのを見ると泣きそうになる「朝子」。
その原因は、過去に経験した辛い記憶から来ています。
幼稚園の頃、祖母と二人で留守番をしていた時、祖母が突然倒れてしまったのです。
目の前で祖母が倒れてしまった朝子は、強いストレスから寝てしまいます。
これは幼かった朝子への強いストレスが引き起こすストレス性睡眠発作だったのです。
そんな朝子を、人が倒れたにも関わらず眠っていたという理由で叔母が責めました。
その事実が心の傷となり、人が倒れると泣く原因になったのです。
理事長の死についての穏やかな語り、自らの姉を自死で失った過去
理事長には、2歳年上の「千尋」という姉がいました。
母親の死後、家の事を切り盛りしていた千尋に、突然縁談が舞い込み、結婚します。
ある日、姉の存在を忘れかけていた時、千尋は自らの生命を絶ってしまいます。
嫁ぎ先でのストレスが彼女を死に追いやったのです。
そんな過去から、時折逃げ出すことも必要だと理解した理事長は、いざという時に助けてくれる人を見つけておくことの重要性を学んだのです。
小説『カーテンコール!』を読み終えた感想
大学の卒業が単位不足で難しいと聞くと、本人の努力不足だと思いがちです。
しかし、努力不足だけではなく、様々なドラマが存在することを、この小説から学びました。
心の病は誰にでも陥る可能性がある病気です。
これは絶対に甘えではありません。
深い傷跡、他人とは違うという劣等感、自分に価値がないという思い。
このような経験が、心の病引き起こしていると感じます。
どんな過去があったとしても、自分自身を許し、受け入れることが大切だというメッセージを、この小説は教えてくれました。
小説『カーテンコール!』で印象に残った名言
私が読んだ小説『カーテンコール!』で特に印象に残った名言を紹介します。
「角田理事長」のセリフ
「あなたは素晴らしい」
小説『カーテンコール!』の評価や口コミ
他の方が小説『カーテンコール!』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
『カーテンコール』筒井康隆:89歳の筒井康隆「最後の作品集」。掌篇小説全25篇読了。面白かったです。しみじみとしたり、笑ったり。全作品が筒井氏86~88歳の時の発表だからなあ。脱帽。入院中の筒井氏を筒井作品の主人公や故人のSF作家仲間が訪れる『プレイバック』には、平井和正も登場。嬉しい。 pic.twitter.com/dAIE78T51N
— 夏が好き (@lovesummerI) November 18, 2023
もし読み継いできた者であれば、我々は天才の終焉を見届けなければならない。
Amazonの口コミ
"『だってあんたたちがあまりに早く死んだんだ。最長老なんて言われて、あんたたちの事を言ったりするSF作家がおれしかいなくなって(中略)だから長生きするしかないでしょうが。長生きするしかないでしょうが』"2023年発刊の本書は"SF御三家"、巨匠の最後の挨拶。25篇の珠玉の作品集。個人的には2016年刊行の『モナドの領域』"最後の長篇"に続き、89歳になった著者自らが"今回の『カーテンコール』は『最後の作品集になるだろう』"と述べているのを知って、ファンの1人として突然に手にとりました。さて、そんな本書は表題の『時をかける少女』や『文学部唯野教授』や『パプリカ』など、かつての自作の主人公たち、小松左京や星新一他、お馴染みの作家仲間たちが病床の作者を訪れる『プレイバック』深夜に総理大臣をシニカルにインタビューする『官邸前』古代の人類を拉致して現代の美食させるタイムマシン物SF『美食禍』大蛇に育てられた美少女の成長を描く『白蛇姫』小さな人魚とのキュートな恋愛譚のはずが。。の『横恋慕』等々、この3年ほど書き継いできたショートショートが収録されているのですが。中ではやはり、特別収録された51歳で食道癌で亡くなったひとり息子、画家の筒井伸輔の死の直後に書かれた『川のほとり』。夢の中で再会した息子と父の架空対話から著者の心情が伝わってきて胸にきます。また、コロナ禍の中で書かれたであろう"『コロナ追分』"あっちもコロナ、こっちもコロナ、あっちに転んでえっさっさ""文学やるなら常識捨てて、世間の糾弾身に引き受けて、何でも書くのがまともな作家"と、うそぶく様子にファンとして変わらない著者らしさを感じて嬉しかった。長年の全ての著者ファンはもちろん、エンタメ性の強い短編集を探す方にもオススメ。続きを読む
Amazonの口コミ
もう少し字は大きくても良かったです
Amazonの口コミ
文字通りの短編集で、一気に読み切りました。高校生の時に貪り読んだ懐かしい感情が蘇ってきました。あちこちで”筒井節”が炸裂しています。まだまだお元気だし、前言撤回して次も書いてほしいです。個人的には文士・筒井康隆の思うAIの現在と未来について、シリアスなものとユーモラスなもの両方を読みたいです。
Amazonの口コミ
引退して正解。質より量の作品集でした。「個人的には」って個人の感想を書くレビューにも書く必要が今はあるんだね。予防線のつもりなのかしらんけど。※個人の感想です
Amazonの口コミ
みなさんの小説を読んだ感想が面白いですね!
おわりに
私が小説『カーテンコール!』についての感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説しました。
「面白い」と感じた方は、ぜひ読んでみてください。