北海道にお住まいの26歳の女性(クリエイティブ系:ライター、動画編集者)が2022年11月頃に「紙の本」で読んだ小説『こちらあみ子』のレビューをご紹介します。
小説の感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説していますので、小説を読む前にその面白さを知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
小説『こちらあみ子』を読もうと思ったきっかけ
同じ月に誕生日がある友人と、お互いに本を贈り合う企画を立て、プレゼントしてもらったのがこの本です。
映画『こちらあみ子』が公開されるという情報を見たときに、以前書店で目にした本だと思い出しました。
あらすじや登場人物をまったく知らず、シンプルなデザインの表紙に惹かれたのです。
また、作者の今村夏子さんが芥川賞を受賞していた点も魅力に感じました。
この作品が、山中瑶子監督の『あみこ』に影響を与えていることは、監督のインタビューを読んで初めて知りました。
小説『こちらあみ子』の内容
あみ子は一風変わった女の子です。
物語の序盤は現在のあみ子の描写から始まりますが、近所に住む小学生とのやり取りの中で語られるエピソードをきっかけに、あみ子自身の記憶を追って進行します。
さらに物語は、あみ子の視点から家族についても描かれています。
周囲から変わっていると思われるあみ子は、自由に振る舞う女の子です。
大人から見ると、彼女には応援したくなるような側面もありますが、一方で、あみ子の固有の特性からくる家族の優しさに対して、複雑な感情を抱かざるを得ません。
作品情報
- 著者:今村 夏子
- ISBN:9784480431820
- 出版社:筑摩書房
- 判型:文庫
- ページ数:240ページ
- 定価:640円(本体)
- 発行年月日:2014年06月
- 発売日:2014年06月01日
- 国際分類コード【Thema(シーマ)】 第1:FB
- 国際分類コード【Thema(シーマ)】 第2:1FPJ
- 公式サイト:http://www.chikumashobo.co.jp/search/result?isbn=978-4-480-43182-0
小説『こちらあみ子』の読みどころをネタバレ覚悟で解説
小説『こちらあみ子』の読みどころをネタバレ覚悟で解説します。
大きく3つに分けて説明します。
この小説の読みどころ
- あみ子に欠けた前歯の謎
- 憧れの存在、のり君
- あみ子の家族の理解
あみ子に欠けた前歯の謎
あみ子は中学生のとき、好きだった男の子“のり君”にパンチを受け、その結果前歯を失っています。
序盤でこのエピソードが登場するため、とても衝撃的な小説だという印象を受けます。
現状だけでは、パンチをしたのり君が悪いように思えますが、なぜ好きな男の子からパンチを受ける事態になったのか、中学生時代のあみ子がどのような人物だったのか。
あみ子のエピソードを読み進めると、のり君との関係も明らかになります。
憧れの存在、のり君
のり君は小学生時代、あみ子と同じクラスで、あみ子の母が運営する書道教室に通っていた子です。
あみ子は一途にのり君を想っていますが、彼は一方的に好かれている様子です。
この逆さの関係をあみ子の視点で描いた文章は魅力的です。
中学生になったあみ子の感情は変わらず、成長し続ける周囲との対比が描かれています。
二人きりになったとき、あみ子が「好き」と言うと、のり君は「殺す」と応えます。
このやり取りを繰り返す中でのり君はあみ子を殴ってしまいますが、それがあみ子の望んだ形の破壊だと感じることができます。
あみ子の家族の理解
あみ子はおそらく発達障害です。
作中ではその特性がしっかり描写されていますが、はっきりと「あみ子は発達障害だ」とは書かれていません。
家族はあみ子の特性を否定せず、彼女が理解できないことに対しては「わからない」と誠実に答えます。
家族は二種類の優しさ、すなわちあみ子を否定しない優しさと、わざと説明をしない優しさを持っています。
後者はあみ子へのさらなる理解を示し、読み手からは支えたいという気持ちを引き出します。
小説『こちらあみ子』を読み終わった感想
少し変わった性格でも、純粋で無垢という言葉がぴったりのあみ子。
ありのままの自分で生きることが、学校の枠内では窮屈と感じるあみ子。
彼女の内面的世界が何なのか、理解されないかもしれない行動には必ず理由があること。
あみ子を中心に、様々なことを考えるきっかけを与えてくれる作品です。
作中のあみ子はエネルギッシュで、ぐっと落ち込む姿は殆ど見せず、子供らしさが際立ちます。
ページをめくる手が止まらず、まるであみ子の目線になったような感覚になりました。
小説『こちらあみ子』で印象に残った名言
私が小説『こちらあみ子』を読んで特に印象深かった名言です。
「あみ子」のセリフ
「応答せよ。応答せよ。こちらあみ子」
小説『こちらあみ子』の評価や口コミ
他の方が小説『こちらあみ子』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
今村夏子さんが「むらさきのスカートの女」(朝日新聞出版)でついに芥川賞受賞!おめでとうございます🎊
今村さんの原点、太宰治賞・三島由紀夫賞W受賞の衝撃デビュー作『こちらあみ子』(ちくま文庫)にもぜひご注目を。こんな小説他にない!度肝抜かれる傑作です。町田康さん穂村弘さんの解説付き‼︎ pic.twitter.com/gaYfdYcAcZ
— 筑摩書房 (@chikumashobo) July 17, 2019
【今村夏子さん「あひる」が芥川賞候補に!】
太宰治賞と三島由紀夫賞のW受賞を果たした衝撃のデビュー作『こちらあみ子』(ちくま文庫)が、現時点での唯一の作品集です。こんな小説は他に絶対ない!
町田康さん、穂村弘さんの超豪華W解説も。 pic.twitter.com/LhzWHJH5Zb— ちくま文庫 (@chikumabunko1) June 19, 2016
【初書評連載】Maiの1人前本棚はじまります📕
推し小説(文学)をご紹介する連載をさせていただくことに!
記念すべき 1冊目は。。。
今村夏子さんの 『こちらあみ子』 です!
こちらあみ子に登場するチョコレートクッキーを切り口に読み解く🍪
下のリンクから
⬇︎https://t.co/Sq1ynAiyQN pic.twitter.com/HwDjevimyj— Mai@1人前食堂 (@ichininmae_1) May 21, 2021
西崎憲さん編集の新しい文学ムック「たべるのがおそい」創刊号入荷しております。小説と翻訳と短歌を中心にした文学ムック です。あの傑作「こちらあみ子」を書いた、今村夏子さんの新作が読めますよ!素晴らしい挿画もたくさん載っています。 pic.twitter.com/uTyL6mQpIt
— HMV&BOOKS SHIBUYA (@HmvBooksShibuya) April 17, 2016
みなさんの小説を読んだ感想が面白いですね!
おわりに
私が小説『こちらあみ子』について感想や読みどころをネタバレありで解説してきました。
面白さを感じ取っていただけた方は、ぜひ手に取ってみてください。
次に読む予定の小説は『MISSING 失われたもの』です。
小説を読む際には、あらすじなどを確認せずに読むことが常なので詳細はわかりません。