千葉県にお住いの40歳男性(流通・小売系:物流センターの検品担当)が2022年8月頃に「紙の本」で読んだ小説『結婚物語〈上〉眠たい瞳のお嬢さん』のレビューをご紹介します。
小説を見た感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、小説を見る前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
小説『結婚物語〈上〉眠たい瞳のお嬢さん』を読もうと思ったきっかけ
人類最後の日が1週間後に迫った世界を舞台にした「ひとめあなたに...」や、家出少女が地球を捨てて火星に旅立つ「星へ行く船」など。
新井素子さんがこれまで発表してきた奇想天外なSF小説や、想像力ゆたかなファンタジーには前々から馴れ親しんでいます。
そんな新井さんがごく普通の男女を主人公にして、交際から結婚にいたるまでを淡々と描いた恋愛物があると知って手に取ってみました。
マンガ家のさべあのまさんによる書き下ろしのイラストが可愛らしく、手のひらサイズの文庫本なのも嬉しいです。
小説『結婚物語〈上〉眠たい瞳のお嬢さん』の内容
高校生の頃からちょっとした文章を書くことを仕事にしていた原陽子は、大学の文学部に進学してドイツ語学科に籍を置きました。
2年生の時に独文科のゼミで同級生になったのが大島正彦、サークル活動や飲み会で意気投合してすぐにお付き合いを始めます。
卒業後に陽子は小説家として本格的なデビュー、正彦は広告代理店に就職が決まってごく普通のサラリーマン。
出会ってからそろそろ2年が過ぎようとしている頃、ふたりは長すぎる春を越えてめでたくゴールインできるのでしょうか?
小説『結婚物語〈上〉眠たい瞳のお嬢さん』の作品情報
作品情報
- 出版社:
- 著者:新井 素子
- 定価:本体456円+税
- 発行年月:1986年08月13日
- ページ数:256ページ
- ISBN:9784041600023
- 言語:日本語
- 公式サイト:https://www.kadokawa.co.jp/product/199999160002/
小説『結婚物語〈上〉眠たい瞳のお嬢さん』のあらすじ
陽子さんは23歳、大学を卒業して現在は物書き業、家族は両親と祖母と妹の5人で東京近郊に住んでいる。陽子さんには大学時代からつきあっている恋人がいる。その名は正彦くん。彼はごく普通のサラリーマンで、両親は岡山在住、従って東京で一人暮らし。2人で結婚の意志を確認しあったところまでは、まあ順調。でもそのあと結婚までには、2人が想像もつかなかったような、ながーい、ながーい道のりが待っていた。フィクションかノンフィクションか。虚実入れ混ぜて描く新井素子風結婚物語。
小説『結婚物語〈上〉眠たい瞳のお嬢さん』の読みどころをネタバレ覚悟で解説
私がネタバレ覚悟で解説したい小説『結婚物語〈上〉眠たい瞳のお嬢さん』の読みどころは大きく3つです。
この小説の読みどころ
- 優しいジュースと粋なコーヒーで乾杯
- 空き時間と目的地までの道のりを確認
- 最大の敵は花嫁の父
優しいジュースと粋なコーヒーで乾杯
原陽子と大島正彦が行き着けにしているのが街角にひっそりと佇む喫茶店、寡黙なマスターがサイフォンで淹れるアメリカンコーヒーが実に美味しそうです。
広告関係というハードな仕事柄かカフェイン中毒気味な正彦、胃袋は丈夫でも猫舌で熱い飲み物が苦手な陽子。
そんなふたりのためにマスターは、トマト・ジュースとアイスコーヒーをお薦めしてくれます。
ノン・カフェインで野菜もたっぷりなジュースは健康に良さそうで、冬でも常にアイスを用意している気遣いもプロフェッショナルですね。
空き時間と目的地までの道のりを確認
とにかく約束の時間に間に合わないのがこのカップル、15分や20分は遅れたうちに入らず下手をすると1時間や2時間なんてこともザラにあります。
正彦の場合は営業職でお得意様の都合に振り回されることが多いためで、時間にルーズな訳ではありません。
一方の陽子といえばとにかく方向音痴なのが玉に瑕、23区内で生まれ育ったのに有楽町と東京駅のあいだで迷子になってしまうシーンには笑わされました。
多忙な合間を縫って正彦はデートの約束を取り付けることができるのか、陽子は無事に待ち合わせに到着できるのか。
ハラハラしながら見守ってあげてください。
最大の敵は花嫁の父
陽子が初めてボーイフレンドを家に連れてきたのは高校2年生の時、母親・光子は健全な男女交際には一定の理解があります。
一方の父・力は昭和の面影を残した頑固オヤジ、愛娘が若干23歳で結婚を宣言した途端にヘソを曲げてしまいました。
今週の土曜日か日曜日、来週の週末、再来週の土日、来月の... 1度ごあいさつに伺いたいという正彦の申し出に対しても、何やかやと理由をつけて延々と逃げ回っていて大人気ないです。
そんな父を説得するために陽子が思い付いた、取って置きの秘策には驚かされますよ。
小説『結婚物語〈上〉眠たい瞳のお嬢さん』を読み終わった感想
ストーリーの時代設定は1984年、このころの若者たちの連絡手段と言えば固定電話や手紙が一般的です。
双方の両親からも祝福を受けていよいよ式が近づいてくる中で、本人たちのすれ違いが多くなっていくのはマリッジブルーでしょう。
そんな時にスマートフォンがあればスッキリ解決できるのに... と少しじれったく感じてしまいます。
SNSなどの便利なツールがない分だけ、お互いに顔と顔を合わせてコミュニケーションを取る大切さも実感できました。
小説『結婚物語〈上〉眠たい瞳のお嬢さん』で印象に残った名言
私が小説『結婚物語〈上〉眠たい瞳のお嬢さん』を読んで特に印象に残った名言です。
「大島正彦」のセリフ
婚約しているんだかしていないんだかよく判らないような状況に、絶対終止符を打ってみせるから
小説『結婚物語〈上〉眠たい瞳のお嬢さん』の評価や口コミ
他の方が小説『結婚物語〈上〉眠たい瞳のお嬢さん』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
そういえば私の結婚に関する知識はだいたい新井素子の「結婚物語」「新婚物語」で得ましたね 結婚式招待状の「ご出席」の「ご」は消すとか むやみに消費電力の高いクソデカ冷蔵庫は買うなとか
— リョージィ@やったね高カロリー大家族 (@ryozy13) April 10, 2022
新井素子の「結婚物語」のなかで主人公の祖母が嫁入り前に結婚資金の積み立てをしていたんだけど、それが満期になった頃、インフレが進みすぎておりたお金で結納に使う昆布しか買えなかったという話がすごく心に焼きついてる。
— 後藤羽矢子 (@hayakogoto) October 9, 2019
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眠たい瞳のお嬢さん
新井素子
恋愛虚実入れ混ぜて描く新井素子の体験的結婚騒動記
なかなか面白かった#眠たい瞳のお嬢さん pic.twitter.com/IV7iVsvomx— ゆき (@rokka_0316) June 8, 2021
おわりに
私が小説『結婚物語〈上〉眠たい瞳のお嬢さん』を読んだ感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説してきましたが、「面白い」と感じられた方はぜひ読んでください。
次に読みたいと思っている小説は『結婚式のメンバー』です。
アメリカ南部ジョージア州で生まれ育った女性作家、カーソン・マッカラーズの代表作。兄の結婚式という一大イベントに揺れる多感な少女の内面は、本作にも通じるものがありそうです。