神奈川県にお住いの37歳男性(福祉作業所農作業員)が2022年12月頃に読んだ『中高生のための文章読本』のレビューをご紹介します。
本書の概要や内容をわかりやすく要約してまとめておりますので、書籍を読んで学んだことや感想、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
『中高生のための文章読本』を購入したきっかけ
私は国語が苦手なので、本を読む時どのような所に注目すればいいのか、何が面白いのか、どのような所が優れているのかが分からず、学生時代は自分は国語とは縁がないなと思っていました。
しかし、最近になって小説やエッセイを読んで面白いと思う機会が増え、大学の入試問題などを解いてみると良い評論が多く、国語の面白さに気付くようになりました。
国語の初歩であるこの本を読む事で、読書の仕方の第一歩が分かるのではないかと思い、気になっていました。
この本は、中高生レベルで現代文の面白いポイントを解説してくれているので、小説やエッセイの工夫や面白さが分かります。
これからの読書体験が向上するような気がしたので、購入しました。
『中高生のための文章読本』の概要
「書かれた文字だけが本ではない。日の光、星の瞬き、鳥の声、川の音だって、本なのだ。世界というのは開かれた本で、その本は見えない言葉で書かれている。」
本書の中にはこのような言葉が出てきます。
普通に考えれば、本というのは文字が印刷された紙の束です。
しかし、本を読む時に体験している高揚感、ファンタジー世界の出来事、穏やかな気持ち、感動、といったものは、日の光、星の瞬き、鳥の声、川の音の中にも見い出す事ができます。
このような時、本は自然世界の出来事にも当てはめて考える事ができるのではないかと思いました。
また、本がひとかたまりの文字の欠片を集めた理論の集合体である時、自然科学理論の集合体の欠片である日の光や川の音も、本と同じように捉える事ができます。
この時、本、文字=日の光、川の音、星の瞬きという方程式が成り立つのであり、どちらも世界を構成する理論の断片であるという意味において、共通点があるのではないかと思います。
おそらく著者は、そのような事を言いたかったのであり、難しい解釈ではありますが、本=日の光という考え方は面白いなと思いました。
このように、この本にはユニークな考え方が多数掲載されており、興味を持った方には是非一読をおすすめします。
『中高生のための文章読本』の基本情報
基本情報
- 出版社:筑摩書房
- 著者:澤田 英輔/仲島 ひとみ/森 大徳
- 定価:本体968円(税込)
- 発行年月:2022年10月15日
- ページ数:224ページ
- ISBN:978-4-480-91743-0
- 言語:日本語
- 公式サイト:https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480917430/
『中高生のための文章読本』の目次
目次
- 第1章 不思議を見つめる
- 第2章 人と出会う
- 第3章 誰かとつながる
- 第4章 視点を変える
- 第5章 自分を生きる
- 第6章 未来をつくる
- 終章 読書への誘い
『中高生のための文章読本』のYouTube(ユーチューブ)
『中高生のための文章読本』についてYouTube(ユーチューブ)でわかりやすく解説してくれている動画がないか調べてみました。
残念ながら本書を紹介しているYouTubeチャンネルはなかったため、本ブログにて要点をまとめてお伝えできればと思います。
『中高生のための文章読本』から学んだことの要約とまとめ
『中高生のための文章読本』から私が学んだポイントは大きく3つの内容です。
私が学んだこと
- 欠点も行き過ぎると長所になる
- 自分の思い込みなど些細なもの
- 歌を読み解く方程式
本書は、面白い文章を次々と紹介していく文章読本であり、興味深い考えが次々と出てくるのですが、例えば、次のような記述も面白いです。
だから、身体が勝手にやっている事を知る事は、君がこれまで過ごした時間の厚みを知る事でもある。
君の身体が、どんな風にして、今の身体になったのかを。
これを表す例として、例えば、駅の改札で突然倒れた人をとっさに抱きかかえて介抱する場面があったとします。
この身体が勝手に起こした動作は、その人の善の精神が積み重なって行われた行為だという事ができます。
普段から、悪い事ばかり考えていたら、突然倒れた人を抱きかかえるという反応をする事はできないでしょう。
そのような意味において、このケースは、常日頃から徳を積むという事が体が勝手に動いたという行為の差として表れたケースなのではないかと思いました。
同じような事は猫背の人、背筋のぴんと伸びている人との違いにも表れてくるのではないかと思いますし、これこそそれまで過ごした時間の厚みを知る事ではないかと思いました。
このように本書からは、自分の今について知る手がかりを得る事もできますし、様々な良い事が書いてあるのでとても高い完成度を示していると思います。
欠点も行き過ぎると長所になる
誰にでも欠点はあると思うのですが、天才達の欠点はそれ自体が天才的です。
キュリー夫人は没頭し過ぎるという欠点を持っており、それは彼女が読書に熱中している時に、周りにイスを積み上げられてもそれに気付かなかったというほどです。
そして、イスが倒れた時、初めてそれに気付いたという極度に高い集中力を持っていた人物であり、これは古代ギリシャの科学者アルキメデスを彷彿とさせるエピソードです。
キュリー夫人は、その後も赤かぶとサクランボ以外口にせずに黙々と本を読み、自身の研究に没頭したそうです。
このエピソードを読んだ時、作家の上橋菜穂子さんは自分も同じような経験があるので仲間がいて嬉しかった、と語っていて、凄いではなく嬉しいと思った所に上橋さんの天才性を垣間見た気がして驚きました。
このように、欠点も利点として働くというエピソードを読み、何があろうが揺らぐ事のない、学ぶ事への飢えに惹かれたという上橋さんの言葉には、感慨深いものがありましたし、私もそのような境地を目指したいと思いました。
自分の思い込みなど些細なもの
水野敬也さんは、顔に傷があるのですが、それを気にして学校ではつらい生活を送っていました。
そんな中で、学校だけではなくて社会全体が自分の敵に思えてきたそうです。
このような状況自体すでに普通の状態ではなく、相当苦しかったのではないかと思うのですが、そんな水野さんもデザイン系の高校に入ったとたん、自分の顔の傷が気にならなくなったそうです。
そこでは水野さんの顔を気にする人はおらず、むしろそのようなものは眼中になく、自分の世界に没頭する人達であふれていたそうです。
このような水野さんの体験からは、自分の生きている世界など狭いものであり、どんな人でも必ず自分に合う場所を見つけられる、世界は広いという考えが導き出されており、これなどは、良い考えだなと思いました。
自分の気にしているものを全く気にしていない人と出会うと、見識が広がったり、驚きがあると思います。
例えば、前出のキュリー夫人は、美味しいものを食べる事に関心がなく、本を読む事と研究する事しか眼中にない方ですし、このような自分の価値観と異なる生き方をしている方に出会う事には驚きがあると思います。
そのようにして色々な人との交流を豊かにしていけると人生楽しいだろうなと思いましたし、そのようにして人生を楽しめたらいいなと思いました。"
歌を読み解く方程式
本書は、文章読本でありながら、優れた歌を詠む要諦も学ぶ事ができます。
砂浜に二人で埋めた飛行機の折れた翼を忘れないでね
これは俵万智さんの作品ですが、これには読者の意表をつく工夫がしてあるそうです。
普通の人はこれを
砂浜に二人で埋めた桜色の小さな貝を忘れないでね
などとして、常識的な領域から出ていかないと著者は言います。
読者の多くは、自分では飛行機の折れた翼を砂浜に埋めた事がないにもかかわらず、それに対して、現実的な貝殻よりもより強い感情移入をする事ができます。
それはなぜかというと、そこには驚異という要素が隠れていて、読者の意表をつく驚異ゆえに、良い作品に仕上がっているのだと著者は言います。
このような解説とコツが与えられたら、私にも良い歌が詠めそうです。
砂浜に二人で埋めた携帯の写真のデータ忘れないでね
皆さんならどのような歌を詠むでしょうか。
このように考えていくと、歌も結構楽しめるのではないかと思いました。
『中高生のための文章読本』の感想
私達の日常には、案外当たり前でも実はすごい事が結構あったりします。
例えば、この本で紹介されているのは歩くという事。
歩く事は身体が勝手にやってくれる事だから、言葉で伝えるのは難しい。
考えなくてもできる。
というか考えるとかえって出来なかったりする。
これが体の凄いところだと本書では述べています。
確かに、私達は普段歩いている時に特別その事を意識しているわけではありません。
その他にも、最初は意識して練習してやっていた事も、慣れるにつれて意識しないでも出来るようになります。
ピアノの演奏などがこれに当たるのではないかと思いますし、個人的にはこれは無我という仏教思想の入り口ではないかと思うのですが、どうでしょうか。
そのように、様々な方面に考えを展開していける所もこの本の面白い部分だと思いました。
『中高生のための文章読本』の評価や口コミ
他の方が『中高生のための文章読本』を読んでどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
『中高生のための文章読本』読了
本来、検定教科書で実現したかったことがぎゅっと凝縮されたような一冊。問いや手引きが最小限で、安直な方法論も載っていないので、中高生は自由に読み進められます(いっそ問いや手引きもいらなかったのではと思ったほど)。いずれフィクション選も出るのかなと期待。 pic.twitter.com/2G9NQh9H6p— 井上 志音 / Shion Inoue (@Shion_nada) November 26, 2022
『中高生のための文章読本』を読んで、手に入る限りのちくまQブックスを読む とてもいい読書入門だ pic.twitter.com/jQKDtQE7Xz
— 英語ニキ@受験英語Vtuber (@eigonikiV) November 1, 2022
中高生をたくさん教え続けてきている3人の先生が選んだ、『中高生のための文章読本』。さまざまなテーマで20本、5-10分で読めます。刺さる文章が見つかって、そこから読書の世界に入れればいいと思います。 #読書 pic.twitter.com/yYgd4v0NCr
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) October 30, 2022
みなさん本書を読んで学んだことが多いみたいですね!
おわりに
ナイチンゲールは、上流社会に生まれながら当時社会的身分の低かった看護師の仕事に従事します。
それだけでもすごい事なのですが、彼女は兵士の看護のため戦場に赴くという決意をします。
そこで2000人の臨終に付き添い、8時間もひざまずいて看護にあたりました。
これでも相当凄い事なのですが、彼女は兵士の死因の最たるものが感染症である事に気付き、それをデータ化してまとめてビクトリア女王直轄の委員会に提出、どんな権力者でも反論できない客観的な事実を突きつけたのです。
個人的に、このように行動力と勇気、努力によって凄い事を成し遂げた人物こそ真の偉人であり、尊敬される人物なのではないかと思いました。
このエピソードを読んで、頭の良し悪し以外にも、立派な人としての条件には様々な物があるという事を学びましたし、それは今後の社会生活に活かしていきたいと思いました。
このように、ナイチンゲールの行いは後世にも残る偉大な物だと思います。
どうせ死ぬ事が分かっているのになぜ生きようとするのかというのは、人生の意味を問う大きな問題ですが、自分が死んでも自分の子供、想い、残したもの、関わった仕事は残っていく。
自分の一部はそのようにして死なないのではないか、という事を彼女の行動から教えられた気がしました。
次に読みたいと思っている本は『演奏家が語る音楽の哲学』です。
音楽とは、音の世界であり、芸術の世界です。
そこに異分野である哲学がどのように存在するのか、個人的に気になりました。
音楽家の演奏に対する哲学、音の中に潜む哲学、音楽から生まれてきた哲学。
様々な哲学がありそうで、面白そうな本だと思いましたし、自分の知らない世界を知り、そこから新たな知見を学ぶ事ができるのではないかと思いました。