静岡県にお住いの53歳の女性(職業:主婦)が2022年4月頃に「紙の本」で読んだ小説『チームオベリベリ』のレビューをご紹介します。
小説の感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、小説を読む前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
小説『チームオベリベリ』を読むきっかけ
乃南アサさんの小説が出版されるたびに、私は図書館で借りることにしています。
いつも新刊をチェックしに行くと、今回はその棚に小説がありました。
分厚さに少々戸惑いましたが、それでも借りることにしました。
いつも細部まで調べ上げられているので、読むと非常に引き込まれます。
特に感銘を受けたのは、過去に訪れていた東日本大震災のその日の仙台での混乱を描いた「一番長い夜に」です。
どんなドキュメンタリーよりも生々しく、鮮明に描かれていて、「こんな状況だったのだ」と思わず見入ってしまいました。
「チーム・オベリベリ」は北海道開拓団の話で、細部まで調べて書かれており、各場面が頭に浮かんでくるような感じで読むことができました。
函館が好きで訪れていたことや、北海道開拓のことに興味があったことから、この作品にも深く興味を持ち、熱中して読むことができました。
小説『チームオベリベリ』の内容
乃南アサさんの小説は出版されると、常に図書館で借りています。
いつも新作が出るたびに棚をチェックしに行き、「チーム・オベリベリ」もその一冊でした。
分厚さに戸惑いましたが、借りてみました。
乃南アサさんがいつも念入りに調べて書かれているため、読んでいて無意識にのめり込んでしまいます。
そして、「一番長い夜に」では、東日本大震災が起こったその日に、たまたま仙台を訪れた体験に基づき、その日の混乱を描いており、どんなドキュメンタリーを見るよりも生々しく、鮮明さを伝えていました。
「こんなことだったのか・・・」と感じさせられました。
「チーム・オベリベリ」も北海道開拓団の話で、よく調べられ、かつ場面ごとにイメージが頭に浮かんできます。
私は函館が好きで、北海道開拓のことも少し気に留めていたので、この作品にも深く没頭して読みました。
作品情報
- 著者:乃南 アサ
- ISBN:9784065201145
- 出版社:講談社
- 判型:4-6変
- ページ数:674ページ
- 定価:2300円(本体)
- 発行年月日:2020年07月
- 発売日:2020年07月02日
- 国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
- 国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ
- 公式サイト:http://bookclub.kodansha.co.jp/book?isbn=9784065201145
小説『チームオベリベリ』の読みどころをネタバレ覚悟で解説
小説『チームオベリベリ』の読みどころをネタバレ覚悟で解説します。
大きく3つのポイントに注目いたします。
この小説の読みどころ
- チーム・オベリベリ~険しくも希望に満ちた北海道開拓団の歩み
- ここに見られる~未知の北海道の歴史、チーム・オベリベリの道程
- 異国である北海道、アイヌ人との交流もチーム・オベリベリの大課題
チーム・オベリベリ~険しくも希望に満ちた北海道開拓団の歩み
「チーム・オベリベリ」は約140年前、北海道の十勝地方に移住し、新天地である帯広・オベリベリを開拓した若き挑戦者たちを指します。
厳しい寒さと自然と闘いながら、未開の地に家を建て、農地を開き、生活していきます。
アイヌ人との交流や異なる文化間の摩擦を通して、彼らは新たな地に馴染み、開拓を進めていきます。
主人公、鈴木カネは横浜生まれで西洋文化に親しんでいましたが、兄の友人である渡辺勝と結婚し、チーム・オベリベリの一員として北海道開拓に関与していきます。
ここに見られる~未知の北海道の歴史、チーム・オベリベリの道程
この物語はアイヌ人の土地である北海道の開拓を描きます。
異国でありながら同じ日本の土地で、まだ開拓されていなかった北海道への挑戦は約140年前のことです。
大正時代に開拓団「晩成社」が結成され、依田勉三、鈴木銃太郎、渡辺勝らが1883年から帯広の開拓を始めました。
始めのうちは野火やイナゴの大群、天候の不順、獣による被害など多くの苦難に見舞われますが、農作物の収穫や酪農を通じて成果を上げていき、バター工場も創業します。
それ以外にもさまざまな事業にチャレンジしていきます。
十勝を代表する「マルセイバターサンド」の由来となった「マルセイバタ」は、晩成社が北海道で初めて製造した商品です。
異国である北海道、アイヌ人との交流もチーム・オベリベリの大課題
主人公鈴木カネの兄である鈴木銃太郎は独身で、北海道に渡った後にアイヌ人の女性と結婚します。
彼は子供にも恵まれ、妻と良好な関係を築いていましたが、母親はアイヌ人との結婚をよく思っていませんでした。
孫に会うために北海道に来ると、孫を可愛がる一方で、嫁であるアイヌ人女性とは言葉を交わさず、目も合わせませんでした。
まだ異国人と見られていた先住民、アイヌ人との交流は、チーム・オベリベリにとって大きな課題でした。
小説『チームオベリベリ』を読み終えた感想
上・下巻に分かれ、一冊がかなりの厚みを持つ『チームオベリベリ』を、上巻、下巻と借りて読み切りました。
鈴木カネの横浜での女学校時代が丁寧に描かれ、渡辺勝の人柄や晩成社の人々の生活の描写も細部まで行われていて、まさに北海道開拓に関わった人々の歴史書と呼べます。
私は北海道の玄関口である函館が好きで何度も訪れているため、函館が舞台になる部分も多く非常に興味深く読めました。
人気観光地として知られる北海道が今の形になるまでの道のりを知ることは、日本人として必要だと感じます。
同じく乃南アサさんの文章で描かれた沖縄が日本の一部として認識される過程も読みたいと思います。
小説『チームオベリベリ』で印象に残った名言
私が小説『チームオベリベリ』を読んで特に印象に残った名言を紹介します。
「渡辺カネ」のセリフ
天主様はいつでも私を応援してくれます、ありがとうございます。
小説『チームオベリベリ』の評価や口コミ
他の方が小説『チームオベリベリ』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
熱源は小説なのに真実と思っている人は多いし、それならチームオベリベリの方が優れていると思う。
— nobutake_Ishii (@nobutake_Ishii) July 4, 2023
おぐらくんから送られてきたぶりぶりクソ川柳、以前読んだ帯広開拓の実話を元にした小説「チームオベリベリ」を読んだ感想である「オベリベリ~オベリベリベリオベリベリ~」のサンプリングでもあるんですね。我が家だけで通じる文脈なんですけど。 https://t.co/6ykMi15yet
— 絹江くん (@kinuekun) February 16, 2022
乃南アサさんのチームオベリベリを読了しました。
晩成社の話でも依田勉三が悪役の小説は新鮮でした☺️
たしかに依田勉三自身は農作業よりも新規事業考案やわざと貧相に演出した写真が有名ばかりで、他の開拓メンバーの信頼が心配だとは思っていました。 pic.twitter.com/Ie5QhBKSF3— DEB-いがらし (@DEB00116406) October 20, 2022
次々と襲ってくる苦難にも耐えた女性の強さが描かれていました。彼女を支えた信仰と学問の必要性を再認識しました。
Amazonの口コミ
ノンフィクションをフィクションとして女性カネの生涯を描いているので、地域のこれまでの開拓誌より読みやすく、尚未開地の開拓の苦労と十勝の開拓の歴史を描いているので参考となった。小生は渡邉勝の弟で10年後兄を頼って十勝の開拓に入った者の孫です。中身が濃いため年配者としては文字が小さくボリュウムがあるために、読む際に幾分苦労をしておりますが、面白く且つ興味深く読んでいます。
Amazonの口コミ
フィクションですが、晩成社の成り立ちや、帯広の開拓者の苦労はリアリティがあり面白いです。最後の方が少し駆け足のような展開だったのが残念です。
Amazonの口コミ
ロビンソンクルーソーは、フライデーと出会い、彼と友達になったのではなく彼を召使にする。彼には生まれながらの名前があったはずだ。ロビンソンクルーソーは彼にフライデーと名付け、彼の信仰と言語を尊重することなく、彼にキリスト教を教え、英語を教え満足する。数多くの北海道開拓団の中で晩成社はとりわけ、アイヌと親交があり、彼らを助け、教育をしたと言われている。渡邊カネは帯広の開拓の母であり、帯広の教育の母と言われている。つまり、彼女は帯広のロビンソンクルーソーであったのかも知れない。アイヌの生活様式と言語と民族の尊厳は和人によって奪われたままなのだと思った。
Amazonの口コミ
私の故郷を開拓してくれたおかげで、曾祖父母たちも入植して苦労してくれて今の立派な帯広(オベリベリ)があると思うと胸が詰まります
Amazonの口コミ
みなさんの小説を読んだ感想が面白いですね!
おわりに
私が小説『チームオベリベリ』を読んだ感想や、読みどころをネタバレ覚悟で解説しました。
「面白い」と感じた方は、ぜひ読んでください。