広島県にお住いの47歳女性(主婦)が2022年8月頃に「紙の本」で読んだ小説『朝が来る』のレビューをご紹介します。
小説を見た感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、小説を見る前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
小説『朝が来る』を読もうと思ったきっかけ
映画で観たことがあるのですが、衝撃的な内容で原作は敬遠していました。
映画を鑑賞してから二年近くたって、子どもが思春期になってきたし、ただ生まれてきてくれただけで感謝だという気持ちが薄れてきた気がしたので、授かった命のありがたさや、思春期の子ども目線の気持ちを考えるのによいかなと読むことにしました。
子どもが夏休みということもあり、親が本を読む姿も見せたいと思いました。
また、土地勘のある広島、瀬戸内が舞台として出てくるので、どんな描写か興味もありました。
小説『朝が来る』の内容
子どもが出来ず長い不妊治療のすえ、諦めるか悩む夫婦がいました。
そんな時、テレビで特別養子縁組のドキュメンタリーを見かけます。
諦めきれない妻はセミナーへ参加し、簡単でない道のりを経て男の子を授かります。
幼稚園で友たちとトラブルをおこした息子と向き合ったり、大変ながらも幸せに子育てをする夫婦、そこへ突然「息子を返してほしい」と一本の電話があります。
現れた女の子をみても、産みの親とは思えない妻、おいかえします。
そこから、女の子がどうして電話することになったのか、彼女の半生が描かれます。
小説『朝が来る』の作品情報
作品情報
- 出版社:文藝春秋
- 著者:辻村深月
- 定価:本体1,500円+税
- 発行年月:2015年06月15日
- ページ数:346ページ
- ISBN:4163902732
- 言語:日本語
- 公式サイト:https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163902739
小説『朝が来る』のあらすじ
長く辛い不妊治療の末、栗原清和・佐都子夫婦は、民間団体の仲介で男の子を授かる。
朝斗と名づけた我が子はやがて幼稚園に通うまでに成長し、家族は平穏な日々を過ごしていた。
そんなある日、夫妻のもとに電話が。
それは、息子となった朝斗を「返してほしい」というものだった――。
小説『朝が来る』の読みどころをネタバレ覚悟で解説
私がネタバレ覚悟で解説したい小説『朝が来る』の読みどころは大きく3つです。
この小説の読みどころ
- 平凡な中学生がなぜ妊娠し、ひとりつらい人生を歩まなければならなかったのか、親子の異なる想い
- 不妊治療をへて養子縁組で子どもを受け入れている方や、10代で苦しんでいる子どもを助けている施設の方の様々な想いに感動します。
- つらい人生、苦しい経験、それでも朝は来るのか。ラストに希望を、自分も誰かを照らしたくなります。
平凡な中学生がなぜ妊娠し、ひとりつらい人生を歩まなければならなかったのか、親子の異なる想い
【ひかり】は、平凡な中学生です。
ある日、学校で人気の男子から告白され、好きな人が出来て、毎日楽しい日々です。
ピュアなひかりは、彼の気持ちにこたえたくて体の関係をもちます。
しかし、幼い彼はセックスを簡単に考えており、ひかりは初潮をむかえていないのに妊娠してしまうのです。
両家の親は、子どもをおろすこと、学校や地域に隠し通すことだけを考え行動します。
また、彼も親の意見に賛成でした。
傷ついたひかりは、親に気持ちを分かってもらうこともできず、家を出るのですが、つらい人生が待っています。
一見、自分とは関係のない世界、でも好きな人ができて好きな人が求めたから、そんなことが起こるかもしれないといろんな立場で考えさせられます。
不妊治療をへて養子縁組で子どもを受け入れている方や、10代で苦しんでいる子どもを助けている施設の方の様々な想いに感動します。
子どもをなかなか授かれなかった夫婦の葛藤や、特別養子縁組で簡単ではない審査をうかって子どもを受け入れる覚悟、生んだけど育てられなくて養子へだす人との間をサポートしている方の熱い想いなど、普段なかなか触れる機会のない気持ちが丁寧に描かれており、一生懸命な人々の気持ちに胸をうたれます。
また、知識も得られ、世間を見る目も変わると思います。
事情があって、親元を離れて苦労している子どもたちが、特別な子どもではなく、誰にでも起こりうることなのではないかと視野が広がるのではないでしょうか。
つらい人生、苦しい経験、それでも朝は来るのか。ラストに希望を、自分も誰かを照らしたくなります。
前半は、子どもをなかなか授かれない夫婦のお話です。
つらいけど、前向きに、そしてほっこり幸せな時間がやってきます。
一方、周りに反対されながらも子どもを産んで養子に出した主人公【ひかり】の人生は、一人でいきようともがき苦しい半生です。
幼い、幼すぎる彼女が救われるには、苦しいだけの人生をやり直せるのか見守ります。
ひかりを救うのは、育ての親、そして養子に出した息子の存在でした。
なんとか、みんなに太陽がのぼって日が差したラスト、読者もほっとし同時に様々なことを身近に考えさせられるはずです。
小説『朝が来る』を読み終わった感想
つらいです、主人公ひかりは何故ここまで不幸なんだろうと思います。
しかし、このつらい人生にいたる選択は、誰もが選ぶかもしれないものであり、他人ごとではないと考えさせられるのです。
不妊治療や、特別養子縁組、事情をかかえた子どものサポート施設など、知らなかった情報や人々の気持ち想いが読み取れます。
活動をしている女性が、信念をもっていながらも現実的に等身大で生きている姿が格好いいし、読んでいて感動しました。
様々な人物が登場しますが、自分だったらと思いたくなるシーンばかりで、読んでよかったです。
小説『朝が来る』で印象に残った名言
私が小説『朝が来る』を読んで特に印象に残った名言です。
「栗原朝斗」のセリフ
「ええ!広島のお母ちゃん?」
小説『朝が来る』の評価や口コミ
他の方が小説『朝が来る』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
#読了 朝が来る 辻村深月
「ものすんごく泣ける本」でおすすめいただいた一冊。特別養子縁組で子を授かった夫婦と、産みの親である少女の話。ひかり、栗原夫婦、その親も含め、子が親に与える影響は大きい。ラスト泣けました🥹 ちびたん。#読書好きな人と繋がりたい pic.twitter.com/aVyLaADbYI— アキカオル (@aki_kaoru33) January 14, 2023
『朝が来る』辻村深月さん著
特別養子縁組について深く考えさせられました。佐都子が母になるまでの感情の描写と、夫に対しての声には出さない思いやりと、出産をしてもしなくても溢れ出る母性に胸が熱くなりました。「長く暗い夜の底を歩いているような、光のないトンネルを抜けて」#読了 pic.twitter.com/rlzRA7mSpB
— ぺぺぺ (@pepepenotabi) December 29, 2021
朝が来る|辻村深月 #読了
子どもが欲しくても授からない夫婦と望まない妊娠・出産をした女性。両者を繋ぐ特別養子縁組という制度と人生模様
血縁や家族の在り方から、心の葛藤、周囲の反応のような問題は当然存在する。重いテーマの中に、色々な結び付きを感じるラスト、そしてタイトルが心に響いた pic.twitter.com/VbSaTjNHaF
— ちっち@読書 (@ReadingChicchi) April 21, 2022
おわりに
私が小説『朝が来る』を読んだ感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説してきましたが、「面白い」と感じられた方はぜひ読んでください。
次に読みたいと思っている小説は『恋のゴンドラ』です。
恋愛にまつわる短編集です。登場自分が繋がっている伏線ありです。