福井県にお住いの36歳女性(主婦)が2022年8月頃に「紙の本」で読んだ小説『城塞』のレビューをご紹介します。
小説を見た感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、小説を見る前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
小説『城塞』を読もうと思ったきっかけ
司馬遼太郎の小説にはまり、いくつか作品を読んでいたのですが、ふと戦国時代のものはまだ読んでいないことに気づきました。
織田信長、羽柴秀吉と読み進めていたのですが、さすが戦国時代。描写も生々しい戦場の場面が多く、ちょっと読むのに疲れてしまったのです。
しばらく読むのをやめようかと思ったのですが、ちょうど来年の大河ドラマは家康が主人公であることを思い出し、そこから急に家康に興味が湧きました。
そこで手に取ったのが家康を描いたこの小説だったのです。
小説『城塞』の内容
関ヶ原の戦いで勝利を収めた徳川家康は関東でどんどん力を増していきます。
そのうち、天下一でなくなった豊臣家が段々目障りな存在となっていき、二条城で豊臣秀頼と会見した際、豊臣家を打とうと決意します。
家康の謀略に豊臣家は振り回され、開戦へと巻き込まれていきます。
冬の陣では真田幸村、後藤又兵衛率いる牢人達の働きでなんとか籠城を耐えしのぎますが、夏の陣で野外戦に転じてからはどんどん追い詰められ、ついには大阪城が炎上して幕を閉じます。
小説『城塞』の作品情報
作品情報
- 出版社:新潮社
- 著者:司馬遼太郎
- 定価:(上・下)本体900円+税、(中)本体850円+税
- 発行年月:(上・中・下)1976年12月17日
- ページ数:(上)608ページ、(中)592ページ、(下)592ページ
- ISBN:(上)978-4-10-115220-2、(中)978-4-10-115221-9、(下)978-4-10-115222-6
- 言語:日本語
- 公式サイト:https://www.shinchosha.co.jp/book/115220/
小説『城塞』のあらすじ
秀頼、淀殿を挑発して開戦を迫る家康。大坂冬ノ陣、夏ノ陣を最後に陥落してゆく巨城の運命に託して豊臣家滅亡の人間悲劇を描く。
小説『城塞』の読みどころをネタバレ覚悟で解説
私がネタバレ覚悟で解説したい小説『城塞』の読みどころは大きく3つです。
この小説の読みどころ
- 知られざる江戸期の軍学者、小幡勘兵衛の生涯
- 秀吉の子、秀頼の意外な一面
- 家康の政治家としての姿
知られざる江戸期の軍学者、小幡勘兵衛の生涯
作中で頻繁に登場するのが小幡勘兵衛という人物なのですが、私は読んでいる途中までずっとこの人物を架空の人だと思っていました。
何しろ彼の役目はいわゆる家康のスパイとして大阪城で暗躍する、いかにもドラマのような設定だからです。
ところが後で調べてみると、実際にいた人物だとわかり驚きました。
元々、武田信玄に縁があった人なので、甲州流軍学としての創始者としても名高い人物だそうです。
小幡勘兵衛だけでなく、当時は大阪城にたくさんのスパイがいたことも驚きでした。
秀吉の子、秀頼の意外な一面
これも私は全然知らなかったのですが、秀吉に子どもがいたことがまず、一番の驚きでした。
豊臣家はすぐに途絶えたという印象があり、秀吉の死後、親族がどうなったかということにあまり興味がなかったのです。
実際、秀吉の子の秀頼は若くして亡くなっていて、あまり資料も残されていないようですが、家康が大人になった秀頼を見て、これは今のうちに倒しておいた方がいいと判断したのですから、わりと優秀な人物だったのではないかと思います。
それでも、秀頼が大人になるまで牛を見たことがなかったりとかなりの「箱入り息子」だったことは言動の端々から読み取れます。
家康の政治家としての姿
家康が慎重で、悪だくみに長けていたという印象はありましたが、ここまでかという事実がたくさん書かれています。
例えば、秀吉の菩提寺を取り壊してしまったり、それだけでなく秀吉の墓を掘り起こして、骨ごと処分してしまったりとタチの悪さのレベルが違うのです。
大阪冬の陣が起きるきっかけも、家康が寺の鐘に彫らせた文章が、家康を打つという意味にとれるといちゃもんをつけたことと言われていますし、家康と大阪城が和睦をした後に、勝手にそれを破って大阪城の堀を埋めさせてしまったことも有名です。
小説『城塞』を読み終わった感想
秀吉が亡くなった後の政治について、家康がどのように力を持って、大阪城を潰すまでに至ったのかを詳しく知ることができます。
面白いのは家康の視点だけでなく、スパイであり、後に軍学者と言われた小幡勘兵衛からの視点や、秀頼の従者である大野修理から見た大阪城、また牢人でありながら最後まで勇敢に戦う真田幸村など、様々な人物から見た大阪城が描かれているのが魅力です。
そして、昔の世では珍しく、淀殿を中心とした女性たちがこの短い期間、政治を動かしていたことも興味深いです。
小説『城塞』で印象に残った名言
私が小説『城塞』を読んで特に印象に残った名言です。
「小幡勘兵衛」のセリフ
夢、醒めたり
小説『城塞』の評価や口コミ
他の方が小説『城塞』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
「城塞 下」 司馬遼太郎 #読了
戦国からの火を絶やさず燃やし、華々しく散っていく大阪方。
家禄を守ることに汲々し保身に走り続ける徳川方。
どちらの様も美しい。 pic.twitter.com/1EZff6epge— 藤 (@5bCXA249tDDLbv8) May 2, 2021
「城塞 中」 司馬遼太郎 #読了
家康の緻密に練り上げられた戦略的配慮に、狸祖父と言われただけあるなあと唸ってしまう。
ページを捲る手が止まらなくて気付けば夜中の3時でした🙂 pic.twitter.com/o3hazYm1d8
— 藤 (@5bCXA249tDDLbv8) April 11, 2021
司馬遼太郎『城塞(中)』読了。天下泰平のためとはいえ、豊臣に対する家康の悪辣非道ぶりが凄まじい。残すは下巻、幸村の死に際のみ。
— しょうご (@kskpbrer) July 27, 2015
おわりに
私が小説『城塞』を読んだ感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説してきましたが、「面白い」と感じられた方はぜひ読んでください。
次に読みたいと思っている小説は『夏草の賦』です。
戦国期から安土桃山時代にかけての大名、長宗我部元親を主人公にした小説です。