千葉県にお住いの40歳男性(流通・小売系:物流センターの検品担当)が2022年9月頃に「紙の本」で読んだ小説『楽隊のうさぎ』のレビューをご紹介します。
小説を見た感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、小説を見る前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
小説『楽隊のうさぎ』を読もうと思ったきっかけ
慌ただしく流れていく朝昼晩、ルーティンワークのごとく繰り返される月火水木金土日。
年齢を重ねるごとに感受性が薄れていき、心の中にポッカリと空洞が広がっていくような日々を送っている今日この頃です。
毎日が驚きの連続で次の日がやってくるのが楽しみで仕方がなかった、遥か遠い中学生時代のことを懐かしく思い出してしまいます。
そんな時に気持ちだけでもティーンエイジャーに若返ることができるようにと、みずみずしい1冊を手にとってみました。
小説『楽隊のうさぎ』の内容
今年の春に市立花の木中学に入学した奥田克久、この学校では部活動への参加が全校生徒に義務付けられていました。
新入生説明会では熱心な上級生3人組に囲まれた挙げ句、吹奏楽部へ強引に勧誘されてします。
2年連続で全国大会出場を達成しているだけあってレッスンは相当にハード、毎朝午前6時半には正門をくぐり下校するのは午後8時頃です。
嫌々ながら始めてみると意外にも奥が深く、いつしかその面白さにめり込んでいく克久。
まもなく開催されるのが夏のコンクール、果たしてレギュラーを勝ち取ることができるのでしょうか?
小説『楽隊のうさぎ』の作品情報
作品情報
- 出版社:新潮社
- 著者:中沢けい
- 定価:本体630円+税
- 発行年月:2002年12月25日
- ページ数:352ページ
- ISBN:978-4-10-107231-9
- 言語:日本語
- 公式サイト:https://www.shinchosha.co.jp/book/107231/
小説『楽隊のうさぎ』のあらすじ
「君、吹奏楽部に入らないか?」「エ、スイソウガク!?」―学校にいる時間をなるべく短くしたい、引っ込み思案の中学生・克久は、入学後、ブラスバンドに入部する。先輩や友人、教師に囲まれ、全国大会を目指す毎日。少年期の多感な時期に、戸惑いながらも音楽に夢中になる克久。やがて大会の日を迎え…。忘れてませんか、伸び盛りの輝きを。親と子へエールを送る感動の物語。
小説『楽隊のうさぎ』の読みどころをネタバレ覚悟で解説
私がネタバレ覚悟で解説したい小説『楽隊のうさぎ』の読みどころは大きく3つです。
この小説の読みどころ
- みんなの心をひとつにして奏でるハーモニー
- ささやかな選択が壮大な未来へとリンク
- 大きく息を吸い込んでいじめを吹き飛ばせ
みんなの心をひとつにして奏でるハーモニー
人気が集まる花形のパートと言えばトランペットとサキソフォン、克久が割り当てられたのは少々マイナーなティンパニ。
金管楽器か輝くような高いメロディーと、雷のように低いビートを合わせるのは容易ではありません。
さらには克久のようにまったくの素人から、幼少期から本格的に取り組んできた経験者までいて千差万別です。
そんな個性豊かなメンバーを担当するのは顧問の森勉、髪の毛はいつもボサボサで学校の先生というよりはミュージシャンのような佇まいです。
時には激しく衝突し合う部員たちを、いかにしてまとめ上げていくのかその手腕が問われることになります。
ささやかな選択が壮大な未来へとリンク
体育会系に入るか文化部に入るか、第一志望は地元の公立か他県の私立か、朝食にはトーストか白いご飯か、下着を買い替える時にはトランクスかボクサーブリーフか...。
様々な場面で二者択一を迫られることになる克久ですが、優柔不断なのか思い切って決められません。
学生らしい切実な迷いから、思春期の男の子らしいデリケートなお悩みまで赤裸々に語ってくれます。
時にはじれったく感じてしまうでしょうが、徐々に自分が進むべき道を切り開いていく成長ぶりを見守ってあげてください。
大きく息を吸い込んでいじめを吹き飛ばせ
小学生の頃には克久ととても仲が良かった相田守、一緒にサッカー部に入るはずの約束はいつの間にかうやむやになってしまいました。
ボールに触らせてもらえず延々と校庭を走らされる相田、音楽室で新しい仲間とブラスバンドを謳歌する克久。
次第に相田から陰湿な嫌がらせを受けるようになった克久、無視をされたり陰でコソコソと悪口を言われたりと表面化しにくい分タチが悪いのかもしれません。
勇気を振り絞って立ち向かっていけるのか、そして昔のように友情を取り戻せるのかは見ものです。
小説『楽隊のうさぎ』を読み終わった感想
毎年恒例の定期演奏会が行われるのは市民ホール、部員の家族はもちろんOBや地域のファンまで詰め掛けるほどの盛り上がりようでした。
ステージに楽器を抱えた演奏者たちがひとりずつ登場するうちに、徐々に高まってくる館内の緊張感。
壇上に上がった指揮者がゆったりとタクトを振り下ろし、静まりかえった客席が一斉に息を呑む瞬間が最高潮です。
音楽でしか味わえないはずの感動を、文章にして届けてくれた著者の中沢けいさんに感謝したいと思います。
小説『楽隊のうさぎ』で印象に残った名言
私が小説『楽隊のうさぎ』を読んで特に印象に残った名言です。
「森勉先生」のセリフ
ステージに入ったら、君たちは演奏家なのだ
小説『楽隊のうさぎ』の評価や口コミ
他の方が小説『楽隊のうさぎ』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
中沢けい/楽隊のうさぎ
私も嫌な時間に心のスイッチを切って無心で過ごすことはあったがそれを「左官屋が塗り潰す」とは独特な表現をなさる
少し起伏にかけるようにも感じられたけど目の前のことに夢中になって親と衝突したり、部活で達成感を得たりそうしたことは誰しも経験があるはず pic.twitter.com/O02b75c24h— リリィナイト (@lilyknight_haru) November 15, 2021
『楽隊のうさぎ』読み終わりました。1回読んだことあったけど全然印象違ったな…はじめは一人称小説じゃなかったり、主人公の性格がひねくれてたり、うさぎ出てくるとこ全然わかんなかったりして読みにくいなぁと思ったけど、読んでく内にどんどん共感できるとこが増えてって面白かった。 pic.twitter.com/AXeOxOKugu
— ry (@ry_dragonfly) September 23, 2021
中学3年生ぶりに『楽隊のうさぎ』を読んだ。
当時は高校での吹奏楽部を想像つつ読んでいたけど
今読むと、中高の吹奏楽の思い出、思春期のもやもや、ひたむきに練習し続ける日々と仲間との一体感…
それに加えて主人公の母の気持ちまでなんとなくわかって、とても面白かった!
青春だったなぁ…— あんこのあっこ (@a______kko) October 6, 2021
おわりに
私が小説『楽隊のうさぎ』を読んだ感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説してきましたが、「面白い」と感じられた方はぜひ読んでください。
次に読みたいと思っている小説は『金木犀とメテオラ』です。
天才的なピアノの才能を秘めながらも孤独を感じている、女子高校生をヒロインにした学園ストーリーです。
舞台となるのは北海道の中高一貫校、性別や境遇は違えども、本作の克久の葛藤にも繋がるものがあるでしょう。