東京都にお住いの31歳女性(商社系(総合商社・素材・医薬品等):事務)が2023年3月頃に「honto」で読んだ小説『暗いところで待ち合わせ』のレビューをご紹介します。
小説の感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、小説を読む前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になる方は参考にしてください。
目次
小説『暗いところで待ち合わせ』を読もうと思ったきっかけ
思春期の頃、読書好きの友人から、乙一さんの小説をよく薦められていました。
私の中で乙一さんといえば、黒い背景にナイフが描かれている「GOTH」の表紙の印象が強く、「暗くて重く、怖そう」という自分なりのイメージから、読むのを何となく避けていました。
しかし、電子書籍がセールで安くなっていたことから、「まあ、有名な作家の作品を読んだことがないのも変だし、食わず嫌いもよくない。
試しに買ってみよう」という軽い気持ちで、購入してみました。
小説『暗いところで待ち合わせ』の内容
視力を失い、唯一の家族である父を亡くしたミチルは、家に引きこもって静かに生活しています。
そんな彼女の家に、殺人の容疑で警察から追われているアキヒロが逃げ込んできます。
アキヒロはミチルに気づかれないように居間の隅で身を潜め、生活を始めます。
一方、他人の気配に怯えるミチルは、自己防衛のためにアキヒロに気づいていないふりをして日々を送ります。
問題を抱えた2人の間で、奇妙な共同生活が始まるのです。
作品情報
- 著者:乙一
- ISBN:9784344402140
- 出版社:幻冬舎
- 判型:文庫
- ページ数:262ページ
- 定価:590円(本体)
- 発行年月日:2002年04月
- 発売日:2002年04月11日
- 国際分類コード【Thema(シーマ)】1:FB
- 国際分類コード【Thema(シーマ)】2:1FPJ
小説『暗いところで待ち合わせ』の読みどころをネタバレ覚悟で解説
ネタバレ覚悟で解説したい、小説『暗いところで待ち合わせ』の読みどころを大きく3つご紹介します。
この小説の読みどころ
- 人は孤独で生きていけない。
- 言葉を交わさない二人の間にできる信頼関係。
- 人の気持ちは可視化できないからこそ怖い。
人は孤独で生きていけない
孤独な中で生きてこうと思っていたミチル。
友人であるカズエから「もっと外へ出て、世界を広げた方がいい」と言われつつも、それを実行する勇気はありませんでした。
閉じた世界で生きるミチルの毎日に、アキヒロという異物がやって来ます。
二人は言葉を交わすことも、体が触れ合うこともなく、ただ互いに意識しながら生活していきます。
ある日、アキヒロが咄嗟にミチルを助け、二人の距離がぐっと近づきます。
アキヒロと関わるうちに彼が良い人だと確信したミチルは、自首を促すことを決意します。
そんな時、カズエは外に出ようとしないミチルに根をあげて、彼女を見放そうとしてしまいます。
ミチルは、カズエを自分の人生から切り離し、アキヒロに自首を進めることを想像します。
彼に自首を促すと決めていたのに、心は彼に側にいて欲しがっている。
一人で生きていけるというのは、嘘だったとミチルは自覚しています。
言葉を交わさない二人の間にできる信頼関係
アキヒロは、ミチルが盲目であることを利用して、彼女の部屋に潜伏しています。
また、ミチルも彼の存在に気づいていることを、彼に気づかれないように生活しています。
二人の間に交流はありません。
しかし、一日中、お互いを意識しながら生活しています。
ミチルは耳に神経を集中させてアキヒロを観察し、アキヒロはミチルをじっと見つめて観察しています。
ある日、ミチルが足を踏み外した時、咄嗟にアキヒロが助けに入ります。
ミチルはアキヒロの助けに気づき、彼に知らず知らずのうちに感謝しています。
ミチルもアキヒロも、咄嗟の行動によってお互いの存在を認知することになりました。
それからアキヒロは自分の存在を隠さなくなり、ミチルはアキヒロのために食事を作り始めます。
言葉を交わさない二人の関係性は、互いを警戒しながらも少しずつ距離を縮めていく動物のようです。
人の気持ちは可視化できないからこそ怖い
ミチルはアキヒロとの奇妙な同居生活を始める少し前に、ハルミという女性と出会います。
彼女は、ミチルが落とした洗濯物を拾ってミチルの家まで届けに来てくれた親切な女性でした。
ミチルとハルミは、すぐに交流を深めていきます。
そんなある日、カズエが何気なく撮った写真を、アキヒロが見て驚きます。
それは、ハルミが見覚えのある人物だったからです。
ミチルをハルミから守るため、アキヒロはミチルに忠告します。
「ハルミとは、昔から仲が良かったのか」と……。
ハルミはとある目的のためにミチルに近づいたのでした。
親切そうなハルミからは想像もつかないその目的とは何だったのでしょうか。
小説『暗いところで待ち合わせ』に対する読後感
初めて知った設定、殺人容疑者が我が家に忍び込んで密かに共同生活を開始する構図に、我々は驚愕しました。
これがパニックホラーの物語だと最初は考えていました。
しかし、実際には、この物語は恐怖症の男女が気後れしながらも一歩を踏み出す様子を描いた作品です。
ここには心温まるラブストーリーが展開されています。
読後の感想は爽やかでした。
孤独に囚われて死を覚悟していたミチルとアキヒロ。
彼らは静謐な空間で出会い、冬から春へと移り変わるように、少しずつ心の距離を縮めていきます。
その様子は微笑ましく、また愛おしいものでした。
だからこそ、これは単なるミステリー作品ではないのです。
人間関係を築くのが苦手だと感じている人々は、この物語を通じて勇気を得ることができるでしょう。
小説『暗いところで待ち合わせ』で印象に残った名言
小説『暗いところで待ち合わせ』を読んで、特に印象に残った名言についてお伝えします。
「ミチル」のセリフ
一人で生きていけるというのは、嘘でした。
小説『暗いところで待ち合わせ』の評価や口コミ
他の方が小説『暗いところで待ち合わせ』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
#オススメの小説
『暗いところで待ち合わせ』
乙一さんの推理小説一人暮らしの盲目の女性の家に、逃亡中の殺人犯が忍び込む
設定はサスペンススリラーだが心温まる不思議な作品
読了後は人に優しくしようと思う気持ちになった
口数少ないヒロインのミチルが可愛く、映画の田中麗奈がピッタリの配役 pic.twitter.com/J1B9g454di— アネモネ (@anemone88888) May 12, 2018
先がすごくきになり、あっという間に読み進めました。思っていたよりも心温まる作品でした。
Amazonの口コミ
思っていた展開とは少し違っていましたが?むしろそれが良い!とても面白かったです。
Amazonの口コミ
主人公ミチルとアキヒロの視点が交互に切り替わりながら話が展開されていきます。読み始めていくと大きな転換点があり、後半は伏線が回収されていくので一気に飽きずに読み進められました。登場人物たちが心優しくシリアス調でありながら穏やかな気持ちになれる作品でした。
Amazonの口コミ
二人が初めて無言のままぎこちなくシチューを食べるシーンに感動しました。
Amazonの口コミ
作品自体は図書館から借りて前から読んでいた本でとても気に入っていたので購入しました。内容自体はとても大好きなのでぜひ読んで欲しいです。しかし、私は表紙も含めこちらの商品を好んで購入しましたしたのに実際に届いた本の表紙は全く違うものになっていてガッカリしました。図書館のものと同じ表紙のものをわざわざ選んだのにガッカリです。しかし作品はとても素晴らしいです。掲載している写真をちゃんと変更していただきたい。
Amazonの口コミ
みなさんの小説を読んだ感想が面白いですね!
おわりに
本稿では、小説『暗いところで待ち合わせ』の感想と読みどころをネタバレ覚悟で解説してまいりました。
面白さを感じていただけた方はぜひ、手に取ってみてください。
次に読む予定の小説は『作家刑事毒島』です。
こちらは元刑事であり、現在は人気ミステリー作家かつ技能指導員として活躍する毒島真理が、さまざまな殺人事件を解決していくという物語です。