千葉県にお住いの40歳男性(流通・小売系:物流センターの検品担当)が2022年12月頃に「紙の本」で読んだ小説『クワイエットルームにようこそ』のレビューをご紹介します。
小説の感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説していますので、小説を読む前に内容が気になる方や評価、口コミを調べている方は参考にしてください。
目次
小説『クワイエットルームにようこそ』を読もうと思ったきっかけ
生まれつき体が丈夫で、大きな怪我をしたこともなく、特定の病気に悩まされることもありませんでした。
医者にかかるのは、市が年1回無料で提供している定期検診か、高齢の親戚を見舞いに行くくらいです。
健康体の私には想像もつかない措置入院の実態に迫った小説があり、それを紹介したいと思います。
その著者は、松尾スズキさんです。
彼は自身の劇団を立ち上げた演劇界から出てきた鬼才です。
小説『クワイエットルームにようこそ』の内容
短大を卒業した佐倉明日香は、イベントコンパニオンをしていたときに知り合ったゲームソフト会社の営業マンと入籍しました。
お互いの不倫が原因で結婚生活はすぐに破綻し、彼女は風俗業に近いブラックバイトを始めます。
そこで深入りしたのが、放送作家の焼畑鉄雄という従業員と客という関係です。
明日香は徐々にメンタルバランスを失い、ついには貯めていた安定剤を大量に服用し、意識不明の重体となります。
搬送先はS市の高台にあるK病院、そこで共同生活を送ることになる一風変わった入院患者たちは一体何者なのでしょうか?
作品情報
- 著者:松尾スズキ
- ISBN:9784167717384
- 出版社:文藝春秋
- 判型:文庫
- ページ数:160ページ
- 定価:448円(本体)
- 発行年月日:2007年08月
- 発売日:2007年08月03日
- 国際分類コード【Thema(シーマ)】1:FB
- 国際分類コード【Thema(シーマ)】2:1FPJ
- 公式サイト:https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167717384
小説『クワイエットルームにようこそ』の読みどころをネタバレ覚悟で解説
私がネタバレ覚悟で解説する小説『クワイエットルームにようこそ』の読みどころは大きく3つです。
この小説の読みどころ
- フワフワとした彼女が現実に向き合う時
- タブー視されている精神医療現場に切り込む
- 目指すは光輝く自由の世界
フワフワとした彼女が現実に向き合う時
やりたいことも見つからず、就職する当てもないヒロイン、佐倉明日香。
親元にいるため、飢えることもありません。
お小遣い稼ぎのために手を出したのが新作ゲーム発表会のキャンペーンガール。
ミニスカートを履いて玩具のレーザー銃を構えるだけで日当15000円を得られるという、なかなか良い商売です。
その場で見初められて玉の輿にのり、その後は専業主婦として一生安泰というわけにはいかないのが人生の厳しさです。
突如として降りかかってくる試練に、いかに明日香が立ち向かうのかが見どころとなります。
タブー視されている精神医療現場に切り込む
常日頃から原因不明の体調不良に悩む明日香が通っているメンタルクリニック。
外観は新しく、内装もお洒落で、街中のカフェと変わりません。
一方で、オーバードーズを起こしてしまった彼女が搬送された先は、鉄筋コンクリート造りで無骨な門構え、内部も開放病棟と閉鎖病棟に分かれていて威圧感があります。
さらに奥深くに進むと、厳重な監視が張り巡らされている保護室、「クワイエット・ルーム」。
行動制限から身体拘束、胃洗浄、薬物投与と、かなり過酷な描写です。
目指すは光輝く自由の世界
入院にも様々なパターンがあります。
本人の意志で治療を希望した場合は任意入院。
明日香のようなケースは生命に重大な危険があるために医療保護入院となり、主治医と保護者の承諾を得なければ外出はできません。
午前6時に起床し、同室の人々とラジオ体操。
食事は質素、薄味の病人食です。
レクリエーションルームで過ごすも良し、自室で昼寝をするも良し。
夕食後は検温をし、午後9時に明かりを消します。
規則正しい生活を送りながら、生きる活力を取り戻していく明日香の姿を、外の世界で自由に生きるまで見守ってあげてください。
小説『クワイエットルームにようこそ』の読了後の感想
真面目すぎる元夫と軽快な現在の夫・鉄雄との間で揺れ動く佐倉明日香。
彼女がマニックとデプレッションの状態を繰り返すのは仕方がありません。
病院という隔絶された空間での出会い、食事障害の患者やアルコール依存症の人々との共有生活は日々の順位争いです。
セレブと労働者、社会の勝ち組と負け組、美人と平凡な人、表と裏... 全てが二極化される中で生きてきた明日香の、素直な自分に向き合う成長ぶりには感銘を受けました。
小説『クワイエットルームにようこそ』で印象に残った名言
私が読んだ小説『クワイエットルームにようこそ』で、特に印象に残った名言を紹介します。
「佐倉明日香」のセリフ
誰だって狂気にからめとられることはあります。
ただ、正気を踏み外した場所から身動きが取れなくなっているだけです。
小説『クワイエットルームにようこそ』の評価や口コミ
他の方が小説『クワイエットルームにようこそ』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
【シンゴジラキャスト紹介】
松尾スズキさん(フリージャーナリスト 早船 役)
俳優、映画監督、コラムニストetc。「ジヌよさらば」「恋の門」など監督、出演。舞台脚本や小説「クワイエットルームにようこそ」の執筆など非常に多くの分野でご活躍。多種多様ですな、人の世も松尾さんも。 pic.twitter.com/eWOeHjzzV7— GFAN (@GWorks00) October 9, 2016
おはようございます!
今日の小説。松尾スズキ「クワイエットルームにようこそ」
恋人の鉄ちゃんと大喧嘩し、薬の過剰摂取で精神病院に担ぎ込まれた明日香。そこで拒食・過食・自傷などの問題を持つ患者やナースと出会う。正常と異常の狭間で絶望からの再生を描いた話
それでは今日も素敵な1日を😃 pic.twitter.com/TmvI6XRqXX
— おにぎり貫太郎@老後の入り口 (@taberu365) July 13, 2020
いとうせいこう、宮沢章夫と続いてきたキャス読書会第三回は、大人計画主催の松尾スズキ『クワイエットルームにようこそ』です。あかごひねひねくんと、だらだらと演劇人の小説について、文化の話をまじえながら雑談していきます。8月11日を予定しています。 pic.twitter.com/f5wmO8luC1
— かみしの (@KamisinOkkk) July 19, 2017
一気に読んだ。薄いし、ちょっと持ってでかけるのに良い。たしかに、文体に癖があるけど、私には読みやすかった。映画も見たくなって見た。面白かった。大竹しのぶさんがずば抜けていた。
Amazonの口コミ
切れ味のある短編だったと思う。精神病院を舞台にした設定はありがちかな。文章に勢いがあったように思う。
Amazonの口コミ
友人の薦めで買いました異色で面白かったですよ。クワィエツトルームの意味を書くと、ネタバレになるので書かないけどね。
Amazonの口コミ
映画から原作を手に取りました。原作の方が松尾スズキ節が炸裂している感じ。映画冒頭が文字だとこういう表現なのかとまた映画を観たくなりました。大好きな作品の一つ
Amazonの口コミ
最初に読んだときは衝撃を受けました!精神病院とは、こうゆう場所なんだ!!クワイエットルームとは、そういう意味なんだ!!と。読みながら想像し、段々と面白くなって読むのが止まらなくなって、最後まで一気に読んでしまいました。ページ数が少ない中で、リアルで濃厚な本でした。
Amazonの口コミ
みなさんの小説を読んだ感想が面白いですね!
おわりに
小説『クワイエットルームにようこそ』の感想と読みどころを、ネタバレ覚悟で解説してきました。
「面白い」と感じた方はぜひ、読んでみてください。
次に読む予定の小説は『獄の息子は発狂寸前』です。
見沢知廉の自伝的小説で、波乱万丈な生い立ちと46年の短いが濃密な生涯が描かれています。
彼が政治犯として服役中に収容されていた医療刑務所が舞台になっており、本作以上にディープな世界が垣間見られるでしょう。