神奈川県にお住いの38歳男性(就職支援施設通所・クラウドワーカー:就職支援施設通所・クラウドワーカー)が2023年12月頃に読んだ『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』のレビューをご紹介します。
本書の概要や内容をわかりやすく要約してまとめておりますので、書籍を読んで学んだことや感想、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』を購入したきっかけ
現在しきりと問題視されている地球温暖化について、プロの科学者はどのように考えているのか、問題をきちんと分析していくと何が見えてくるのか。
そのような点が気になり、本書を読んでみたくなりました。
10万年史というタイトルにも何が10万年なのだろうか、と興味を引かれましたし、過去の気候変動のデータからこれからの温暖化問題を考える一助が得られればと思い、購入して見る事にしました。
また実際にこの本を読んだ方が大勢いて、しかもその評価が高かったので、それだけで読んでみようという気になりましたし、それだけの方々に評価される温暖化問題の所見とはどのような物なのだろうか、と思い、読んでみたくなりました。
『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』の概要
著者は、気候変動の考え方について、飛行機事故と自動車事故を例に挙げて説明しています。
例えば、著者は、飛行機事故は、1回の墜落で数百人が犠牲になり大きなニュースになりますが、自動車の事故で亡くなる人の数が、全世界の合計だと3日で1万人に達するという事はそれほど注目されない、と指摘。
気候変動の驚異は、おそらく飛行機事故よりも自動車の事故に似ていると指摘しています。
確かに多くの方にとって気候変動は身近な出来事ではありませんが、大きな脅威である事は確かです。
このような考えのもと、本書では、気候変動問題について、新しい知見を元に考察する、としています。
基本情報
- 著:中川 毅
- 朗読:福尾真
- JP-eコード:90357800000000240950
- 制作・配信:オトバンク
- コンテンツ公開日:2018年12月08日
- 公式サイト:https://audiobook.jp/product/240950
『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』のYouTube(ユーチューブ)
『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』についてYouTube(ユーチューブ)でわかりやすく解説してくれている動画がないか調べてみました。
「ノギタ教授」チャンネルが細かく解説してくれているので、本を読む時間がない方はこちらのYouTube(ユーチューブ)動画をおすすめします。
『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』から学んだことの要約とまとめ
『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』から私が学んだポイントは大きく3つの内容です。
私が学んだこと
- 地球は10万年ごとにぴったりと気候が切り替わる
- 自然を構成する秩序である数学で、自然という無秩序を表す
- 頭の良さよりも心の良さ
過去の地球には、現在とまるで似ていない時代があったという事が、地質などの調査によって分かっています。
大昔には、地球上の氷河が全て消滅してしまった温暖な時代もあれば、反対に地表が全て氷河で覆われてしまった極寒の時代もあったそうです。
それでは、現代が地球の歴史の中でどのような時代なのかというと、全体的な歴史の中ではむしろ寒冷な時代である事が分かっています。
今から1億年前~7000万年前の地球には氷床がなく、今の地球温暖化が進んだ100年後よりもはるかに温暖な状態でした。
その他にも、500万年前の地球には、南極や北極にさえも、氷河が存在していなかったそうです。
また、人類が登場した後ですら、海面の高さが100メートル以上も変動する現象が繰り返し発生し、私達の祖先を絶え間ない試練にさらしてきた、と著者は言います。
近年の地球温暖化は、年に3㎜ほどのペースで海面の上昇が起こっているとされていますが、これは100メートルの上昇と比べると、ほんのわずかです。
このように見てみると、現在の地球温暖化は大したことがないように見えるかもしれません。
しかし、人類は既に既存の海面状態、気候状態の所に都市や文明を築いてきたので、年間3㎜ほどの海面上昇でも、それが積み重なれば大きな被害が発生すると予測されており、温暖化問題が無視のできない深刻な現象である事が分かっています。
地球は10万年ごとにぴったりと気候が切り替わる
著者によると、温暖期と氷期の違いには、ある種のリズムがあることが分かっているそうです。
最近の1万年間は温暖な時代でした。
そして、そのひとつ前の温暖期はおよそ10万年前、もうひとつ前の温暖期は20万年前、同様のピークは、30万年前、40万年前、50万年前にも認められる、と著者は言います。
つまり、地球において、温暖な時代とは驚くほど等間隔に10万年ごとに繰り返されているそうです。
これには理由があって、それは地球の公転軌道に関係しています。
地球の公転軌道は、10万年の時間をかけて真円に近づいたり楕円になったりします。
公転軌道がわずかに細長い時、世界は一様に温暖になり、公転軌道が真円に近くなると世界は氷期に突入するのです。
これは、湖の堆積物を調べたところ、構成物にこのサイクルが見事に記録されていました。
そのような意味において、本書のタイトルである気候の10万年史が出来上がっているのです。
現代は、温暖期の間にある寒期であり、1970年頃からは地球は寒冷化していくような傾向がみられました。
しかし、実際には温暖化が進行しているのが現状であり、現代社会は進んで行くはずの寒冷化よりも温暖化の方向に進んでいて、この事を問題視しているのが現在の温暖化問題です。
著者の説明によって、そのような点について分かりやすく理解する事ができました。
自然を構成する秩序である数学で、自然という無秩序を表す
18世紀のイギリスの造園家ウィリアム・ケント氏は、自然は直線を嫌う、と指摘して、幾何学的な庭園の様式を拒絶しました。
確かに、自然の風景に単純な直線は滅多にありません。
単純な円や三角形を見る事もほとんどありません。
しかし、それが植物の葉っぱや花の形、雪の結晶になるとどうでしょうか。
そこには、どこまでも美しい直線や円形が表れている事があります。
直線や円というものは、数学的な要素であると同時に、世界の真理を論理の形で表した形式の表れです。
それならば、幾何学的な庭園という物は、無秩序に見える自然を秩序的に置き換えた自然である、という事ができ、自然はその裏では、直線や円の数学的要素に形作られているという事ができるのではないでしょうか。
数学者のマンデルブロ氏は、このような数学と現実の関係性に正面から立ち向かったと著者は言います。
彼は、フラクタル幾何学という数学を作り出し、自然界をリアルに再現する方法を考案しました。
このようにして、自然というものを、自然を構成する論理である数学で表すという試みには、面白い要素もあるのではないか、と思いました。
頭の良さよりも心の良さ
本書は、様々な面白い記述に満たされているのですが、その中でも心を打つのは、著者が体験した阪神大震災の時のエピソードです。
著者が阪神大震災の際、避難所にいた時、到着した物資に避難者が殺到して体育館が大混乱に陥ったそうです。
そんな時、ただ一人、入口と反対側のステージに駆け上がり、鋭い声で避難者たちをいさめて鮮やかに秩序を取り戻したのは、見るからに薄汚く風采のあがらない、おそらく要職についていないと思われる初老の男性だったそうです。
このように、人間の良さを測る数値として、学力や勇気、運動神経などがありますが、この方のように、優れた心を持つ事、それが何よりも一番大事である、と言える場合もあります。
大震災があった時、頭が良いけれど大震災など他人事だとせせら笑っているような方と、真っ先に被災地にボランティアとして駆けつける方と、どちらが人として優れているでしょうか。
頭が良ければ、それで社会貢献できますが、本当に優れた人というのは、震災などに対して慈愛の行動を起こせる方、良い心を持った方なのではないか、と思います。
そして、それは誰でも出来る事であるだけに、一層正否が問われる部分でもあると思います。
著者の震災体験からは、そのような人のもつ心というものについて学べたような気がしました。
『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』の感想
氷期が終わって気候が安定してから、今まですでに1万1600万年もの年月が流れています。
そして、今の温暖期は、例外的に長く続いているのだそうです。
そのような事もあり、地球は本来ならすでに氷期に突入しているはずなのですが、人間が温室効果ガスを放出する事で、次の氷期を先延ばししていると考える研究者もいます。
その点について、著者の先ほどの記述では、氷期と温暖期が切り替わるのは10万年周期であり、氷期が終わってから1万1600万年しか経っていない今は、まだ温暖期の半ばなのではないか、と思い至り、個人的にはそこに疑問が残りました。
しかし、温暖期と寒期の間には、小さな気候の変化が繰り返し発生するらしく、そのような点から次は氷期が来ると言われると、納得できるような気がしました。
しかし、温室効果ガスがその氷期を先延ばししているという知見には驚かされました。
また、海面が100メートル以上上下していた時代があった、という事にも驚かされました。
そのような変動を考えた時、私個人としては、気候の変動を少なくしていく事が、今現在築かれている社会を維持する上で最も効果的な事だと思うので、その点を基準にこれからの気候問題について考えていくべきではないか、と思いました。
『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』の評価や口コミ
他の方が『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』を読んでどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
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おかげさまで多くの方にフォロー頂いております
#若手にオススメしたいビジネス書"以外"
ですが、第二弾は、「人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか」
です。https://t.co/LEkRb57zjl— 川邊健太郎 (@dennotai) May 10, 2023
人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス) https://t.co/BPoi9GPEaM
娘の宿題のために読んだジャンル外本ですが、これもすごく面白かったです。— とり(ぺんぎんと文鳥のすがた) (@birdn0305) September 18, 2023
人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス) https://t.co/eLQdLfSTNi via @amazon
これ読みたいな
— hisa (@hinata_hisa) January 17, 2023
【読了】『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)』中川毅 https://t.co/oYU1eUFDkn #booklog
— dorobe56 (@dorobe560) September 14, 2023
年縞博物館いってきた!この本読んでぜひ本物を見てみたいと思ってたから嬉しい!
人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス) / 中川 毅 #読書メーター https://t.co/l8DLIjS8oo pic.twitter.com/U8Cu2cjVlo
— まどンネ (@madoka_pi) March 19, 2023
プロジェクトX的なストーリーに引き込まれる感覚です。読みやすく分かりやすい、なのに著者の強い思いを感じる。壮大なロマン溢れる技術史をベースに気候が理解できます。日本に水月湖という素晴らしい場所があるなんて知らなかった。とても誇りに思える。
Amazonの口コミ
当たり前過ぎて気にもしていない太陽と地球の関係、運動と時間とずれ(真円運動ではないこと)が及ぼす影響、地球からはどうしようもないこと。
Amazonの口コミ
全体のスケール感に感動した。多様性と柔軟性で人間は生き残れるのだろうか? 生き残れなくてもよいのかもしれない?
Amazonの口コミ
地球温暖化という定説や実際に着手されている各種施策に対する一歩引いた冷静な視座を、年稿分析という手法で得られた地質学的タイムスケールに及ぶ知見に基づき与えてくれる良書です。また、そもそもブルーバックスらしい「面白い科学読み物」である本書は、単純に読んでいて楽しいモノなのは確かです。
Amazonの口コミ
昨今、地球温暖化による環境変化が人類の経済活動によってもたらされるものだと多くの人が認識している。だが果たしてそれが、本当に科学的根拠によって説明しきれるものなのか。それとも気象変動は地球そのものが持っている特性であって、それは人間の力では、どうしようもできないものでなのかと常日頃、疑問に思っていたところにこの本に出会いました。地球の気象変動が過去にどのように起きているのか具体的に理解することができましたし、人間がもたらす活動による気象変動の影響は、間違いなくあると言うことがわかりました。プロローグの文章からして、引き込まれる良書です。興味のある方は一読することをお勧めします。
Amazonの口コミ
みなさん本書を読んで学んだことが多いみたいですね!
おわりに
これからの気候変動がどうなるかは未知の領域です。
著者は、変動に何らかの傾向がみられた場合、それを近い将来に当てはめる事は必ずしも無意味ではない、としています。
しかし、本当の劇的な変化までは予測できないし、その先にどんな世界が待っているのかも本質的には未知である、というのが著者の考えです。
そして、面白い事に、このような体系が当てはまるものとして、著者は、人間の健康や株式市場などがその典型例である、としています。
自然界は複雑な要素が多数相互作用をして成り立っており、その上で平均的状態の影響下に置かれています。
これは株式市場も同じで、景気という平均的状態の中で、多数の構成要素が相互作用しながら株式の相場が動いていくという形をとっており、平均がある事、多数の構成要素が相互作用する未知の構造体である事、などが似ています。
そして、人間の身体の健康も、恒常性という一般的な平均状態を保ちながら、多数の構成要素が相互作用していく未知の体系であり、いつ病気になるか分かりませんが、基本的に健康な平均状態を維持し続けるという点が似ています。
このように、著者は、気候というものは、株式市場であり、人間の健康である、と述べており、その点面白い部分があるな、と思いました。
このような考え方は、物事を多角的に見ていく上で役立つものであり、物の考え方を展開していく上で役立つのではないか、と思いました。
次に読みたいと思っている本は『指標・特徴量の設計から始める データ可視化学入門 データを洞察につなげる技術』です。
この本は、本書で著者が湖の堆積層から地球の気候の変化を分析していった過程と似たような事に言及しており、目に見えない不定形なものに形を与える、つまりデータ化するという点で面白い部分があるな、と思いました。
大学入試の問題のひとつに、不定形の未知のものに形を与えるのが科学である、という記述がありましたが、それはつまりデータ化するという事である、とも言えるのではないか、と思いました。
このような点から、データの可視化という手法について学べたら面白いのではないか、と思いました。