小説のレビュー

【ネタバレ注意】小説『屍鬼』のレビュー!小説を見た感想は「現代ホラー小説の傑作には魅力がいっぱい」

山形県にお住いの32歳男性(流通・小売系:書店員)が2022年7月頃に「紙の本」で読んだ小説『屍鬼』のレビューをご紹介します。

小説を見た感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、小説を見る前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。

この小説の読みどころ

  • 村人たちの緻密な描写
  • 屍鬼という非現実的存在に対する科学的アプローチ
  • 怪物と人間が入れ替わるカタルシスと地獄絵図

小説『屍鬼』を読もうと思ったきっかけ

ここ最近、「吸血鬼」に興味を持ち、『吸血鬼ドラキュラ』や『カーミラ』といった古典を読んでいました。

現代の吸血鬼ジャンルも読みたいと考え、何がいいかなと探した時に『残穢』の著者が吸血鬼ものを書いていることを知り、ハードカバー上下と中々値が張りましたが思い切って購入しました。

何故吸血鬼文学に興味を持ったのかと言えば、創作で吸血鬼を出そうと考え、その取材のために買いだしたのが始まりでした。

著者の『残穢』はとても面白かったため、『屍鬼』も期待して読みました。

小説『屍鬼』の内容

日本で唯一といっていい、土葬の風習がある村。そこに外部から、奇妙な一家が移り住みます。

彼らは屋敷に引きこもり、村人は屋敷の住人と顔を合わせることが殆どありません。

そんな中、村では徐々に不審死が広がっていきます。

貧血と無気力な状態になり、三日も持たずに突然死してしまう奇妙な症状。

村唯一の医者は伝染病を疑いますが、どういう経緯で感染するのか、何故死亡するのか、まったく目途が立ちません。

一方、村の住職は奇妙な一家の一人娘と夜に出会い、親睦を深めます。

死者はどんどん増えていきますが、医者は遂にこの不審死は起き上がった死体……屍鬼によるものだと気づきます。

奇妙な一家こそ屍鬼の親玉であり、屍鬼に襲われた者の一部も屍鬼として起き上がり、人を襲っていたのです。

住職が出会った少女こそ屍鬼のリーダーであり、彼女の目的は村を屍鬼の楽園にすることでした。

医者は残った村人たちを焚きつけ、屍鬼狩りを始めます。

住職は屍鬼側に共感し、彼らの下に身を寄せます。

家族を殺された恨みと恐怖で暴徒と化した村人たちは屍鬼を虐殺していき、屍鬼は少女を残して全滅します。

村もまた一人の村人によって火をつけられ、消滅します。

残った少女と新たに屍鬼となった住職は村から出て姿を消します。

小説『屍鬼』の作品情報

屍鬼(一)の作品情報

  • 出版社:新潮社
  • 著者:小野不由美
  • 定価:本体800円+税
  • 発行年月:2002年02月01日
  • ページ数:583ページ
  • ISBN:978-4-10-124023-7
  • 言語:日本語
  • 公式サイト:https://www.shinchosha.co.jp/book/124023/

屍鬼(二)の作品情報

  • 出版社:新潮社
  • 著者:小野不由美
  • 定価:本体800円+税
  • 発行年月:2002年02月01日
  • ページ数:503ページ
  • ISBN:978-4-10-124024-4
  • 言語:日本語
  • 公式サイト:https://www.shinchosha.co.jp/book/124024/

屍鬼(三)の作品情報

  • 出版社:新潮社
  • 著者:小野不由美
  • 定価:本体670円+税
  • 発行年月:2002年03月01日
  • ページ数:425ページ
  • ISBN:978-4-10-124025-1
  • 言語:日本語
  • 公式サイト:https://www.shinchosha.co.jp/book/124025/

屍鬼(四)の作品情報

  • 出版社:新潮社
  • 著者:小野不由美
  • 定価:本体800円+税
  • 発行年月:2002年03月01日
  • ページ数:574ページ
  • ISBN:978-4-10-124026-8
  • 言語:日本語
  • 公式サイト:https://www.shinchosha.co.jp/book/124026/

屍鬼(五)の作品情報

  • 出版社:新潮社
  • 著者:小野不由美
  • 定価:本体710円+税
  • 発行年月:2002年03月01日
  • ページ数:478ページ
  • ISBN:978-4-10-124027-5
  • 言語:日本語
  • 公式サイト:https://www.shinchosha.co.jp/book/124027/

小説『屍鬼』のあらすじ

人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。山深い集落で発見された三体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躙したかのように散乱していた――。闇夜をついて越して来た謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。殺人か、未知の疫病か、それとも……。超弩級の恐怖が夜の帳を侵食し始めた。

小説『屍鬼』の読みどころをネタバレ覚悟で解説

私がネタバレ覚悟で解説したい小説『屍鬼』の読みどころは大きく3つです。

この小説の読みどころ

  • 村人たちの緻密な描写
  • 屍鬼という非現実的存在に対する科学的アプローチ
  • 怪物と人間が入れ替わるカタルシスと地獄絵図

村人たちの緻密な描写

この小説は群像劇です。

登場人物は50人以上でしょう。

村の住人にはそれぞれ名前があり、家族があり、生活があり、夢があります。

閉塞的な村の中で彼らの人間ドラマが描かれていきます。

『屍鬼』は終盤まで殆ど派手なシーンはなく、特に序盤は村人の生活が緻密に描写されます。

読者はある程度彼らに感情移入していくでしょう。

そんな中で屍鬼が暗躍し、村に死が広がっていきます。

毎日のように続く葬式、誰しもが家族を突然奪われ苦悩します。

彼らはホラー映画やモンスターパニック映画の犠牲者であり、普通の作劇ならただのモブとして処理されるでしょう。

『屍鬼』では彼らモブも確かに生きていたと強烈に読者に訴えかけるのです。

屍鬼という非現実的存在に対する科学的アプローチ

屍鬼はつまるところ吸血鬼であり、非現実的な存在です。

『屍鬼』は現代日本が舞台であり、吸血鬼の存在などすぐには受け入れられません。

また、吸血鬼に詳しい旅人やエクソシストも登場しません。

主要登場人物の一人である医者と住職は犠牲者をリストアップし、あらゆる科学的アプローチを駆使して不審死の真相を暴こうとします。

この辺りのリアリティ描写が凄いです。

あらゆる伝染病に該当しない、感染源も分からない、これは新種の伝染病か、いや病気にしては腑に落ちない点が多すぎる……。

物語も半分を過ぎたところで、医者が「まさか吸血鬼か?」と気づくシーンは読者に大きなカタルシスを与えます。

しかし、そこからも長い。医者は自分の妻を使って実験し、屍鬼の生態と弱点を探り出しますが、中々村人は信じてくれません。

彼等もまた現代日本の常識で生きているからです。

屍鬼の存在をどう村人が受け入れていくのか、そこが『屍鬼』二つ目の見どころです。

怪物と人間が入れ替わるカタルシスと地獄絵図

本作最大の魅力は終盤の人間と化け物の逆転です。

終盤までは屍鬼が暗躍します。

村人は不審死の正体が分からず、真相に気づいた者も殺され、幼い少年も毒牙にかけられます。

頼みの綱の医者も絶望し、残りのページ数からこの物語はバットエンドで終わるのかと私も半ば受け入れました。

しかし医者の機転によって屍鬼の正体は暴かれ、村人による屍鬼狩りが始まります。

この描写が壮絶です。

実のところ屍鬼は他作品の吸血鬼のような特殊な力を殆ど持っていないので人間の集団に本気で襲われると逃げ惑うしかないのです。

何とか村を脱出しようとする屍鬼が一人、また一人と見つかり心臓を杭で刺されて死んでいきます。

この辺りから視点は屍鬼に映るので見つかって殺されていく屍鬼の恐怖と絶望の描写が読んでいてとても気分が悪くなります。

つまりホラー小説として最高ということです。

小説『屍鬼』を読み終わった感想

正直言ってかなり長いです。

また、えげつない描写や残酷な描写も多く、万人にはオススメできません。

ただ、今まで読んだホラー小説ではベスト5に入る傑作なのは間違いありません。

怪物、犠牲者、ハンター。それぞれの心情全てに共感でき、最後の化け物退治もただただやるせなくなります。

屍鬼が人を襲うのは襲わねば自分が餓死するからです。

リーダーであり村に屍鬼を広めた少女もまた、誰かによって屍鬼にされた被害者であり、人間に戻ることを夢想しています。

明確に「〇〇が悪い」と言えない、後味の悪く、また考えさせる作品です。

自分が屍鬼になったなら餓死を選ぶか、人を襲うのか。

何度も言いますが、傑作です。

小説『屍鬼』で印象に残った名言

私が小説『屍鬼』を読んで特に印象に残った名言です。

「屍鬼のリーダーである少女、沙子」のセリフ

「私は、神様に見放されているから」

小説『屍鬼』の評価や口コミ

他の方が小説『屍鬼』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。

おわりに

私が小説『屍鬼』を読んだ感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説してきましたが、「面白い」と感じられた方はぜひ読んでください。

次に読みたいと思っている小説は『悪の教典』です。

教師が生徒を皆殺しにする話なのでホラーが苦手な方にはおすすめできませんが、ホラー小説が好きなので読むのが楽しみです。







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