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小説のレビュー

【ネタバレ注意】小説『戦士の休息』のレビュー|小説を読んだ感想は「献身女と依存性男の背徳感あふれる恋愛小説」

千葉県に在住の40歳男性(流通・小売系:物流センターの検品担当)が、2022年1月頃に「紙の本」で読んだ小説『戦士の休息』についてのレビューをご紹介します。

小説の感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説していますので、小説について事前に興味を持ちたい方、評価や口コミが気になる方は参考にしてください。

この小説の読みどころ

  • 懐は暖かくとも心は満たされない。
  • 豊かな環境で活力を取り戻す。
  • 一番の違いが大きく命運を分ける。

小説『戦士の休息』を読もうと思ったきっかけ

20世紀のフランスを代表する女性作家として、たくましい筆力を持つC.ロッシュフォール。

しかし、現在のところ日本語訳はわずか1冊しか出版されていません。

彼女が1960年に発表した出世作は、常々、読んでみたいと考えていました。

伸びった絶版となってしまい、新刊書店では入手が難しく、インターネットの古書通販サイトでも高値で取引されています。

近くの市立図書館のデータベースで検索し、やっとのことで閉架書籍としての取り寄せが実現しました。

書庫から届いたその本を手に取り、感激しています。

小説『戦士の休息』の内容

ジュヌヴィエーヴ・ル・テイルは長らく疎遠にしていた伯母から、莫大な土地と財産を受け継ぎました。

そのほとんどを前々から立てていた計画通りに困窮している子どもたちに寄付すると決意し、身一つで駅へと向かいます。

待合室で偶然目に留まったのは国有鉄道のキャンペーンポスター、描かれているのはサン・ポール・ドヴァンス。

南仏の美しい風景に心を奪われ、衝動的に汽車に飛び乗ったジュヌヴィエーヴ。

果たして新天地で彼女を待ち受けているものとは何でしょうか?

作品情報

  • 著者:落合 博満
  • ISBN:9784000259125
  • 出版社:岩波書店
  • 判型:4-6
  • ページ数:240ページ
  • 定価:1500円(本体)
  • 発行年月日:2013年08月
  • 発売日:2013年08月28日
  • 国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:ATF

小説『戦士の休息』の読みどころをネタバレ覚悟で解説

私がネタバレ覚悟で解説します小説『戦士の休息』の読みどころは大きく3つです。

この小説の読みどころ

  • 暖かな懐と、満たされない心
  • 豊かな環境で取り戻す活力
  • 大きな違いが分ける命の運命

暖かな懐と、満たされない心

子どもの頃に一度だけ会った伯母さんが突然亡くなり、土地と財産が転がり込んできます。

都会には2軒のアパート、郊外には1軒の戸建て住宅、年金と有価証券もたくさんあり、現金も自由に使い放題です。

主人公のジュヌヴィエーヴは何とも羨ましい身分のお嬢さんですが、その眼差しは憂鬱で、横顔も何処か寂しげです。

お金では買えない幸せを探すため、彼女はすべてを投げ捨て、生まれ故郷を出発します。

彼女の後ろ姿は、勇気を貰えることでしょう。

豊かな環境で取り戻す活力

煩わしい相続の手続きを済ませると、周囲がにわかに騒がしくなります。

ろくに顔も知らない親戚や自称「友人」がすり寄ってきます。

その一方で、人並み外れたボランティア精神の強いジュヌヴィエーヴが一文無しになった途端、みんなが波が引くかのように去っていくのです。

それほど変わり身の早さは見苦しいですね。

そこで人間不信になった彼女は、目指すところも決めずに、一人で電車の旅に出ます。

意外と打たれ強いのかもしれませんね。

彼女が辿り着いたのは、オレンジの木々が生い茂る、気持ちの良い山の突起部です。

傷ついた心を癒すには、これが最適だったのでしょう。

大きな違いが分ける命の運命

モノクロ映画を観ていると、「ファム・ファタール」という言葉を聞いたことがありますか?日本語に直訳すると「運命の女」となりますが、実際には主人公は男で、女性はその引き立て役に過ぎないという構図が背景にあります。

しかし、この小説ではジュヌヴィエーヴが紛れもない主役で、「運命の男」となるのは同じホテルの隣に滞在している学生、ジャン・ルノオです。

7号室に宿泊していたジュヌヴィエーヴが、うっかり6号室のドアに鍵を差し込んだ瞬間から、人生の歯車が狂い始めます。

これはゾクリとしますね。

小説『戦士の休息』を読み終えた感想

自分の生きる意味を追い求めて旅に出たジュヌヴィエーヴと、自らの退屈な人生を終えるために放浪を続けていたルノオ。

全く正反対のふたりの出会いはドラマチックですが、そこで出会った「平和ホテル」は不吉な予感を感じさせました。

客室でただひたすら眠り、お酒を飲み、お気に入りの推理小説に耽るルノオの自堕落な生活ぶりには呆れました。

「天使」と呼ばれ、何から何まで世話を焼いていたジュヌヴィエーヴがついに非情な決断を下すシーンは圧巻でした。

小説『戦士の休息』で印象に残った名言

小説『戦士の休息』を読んで、特に印象に残った名言を紹介します。

「ジュヌヴィエーヴ・ル・テイル」のセリフ

自分の過去と縁を切ってしまったの。

そして自分の未来ともね

小説『戦士の休息』の評価や口コミ

他の方が小説『戦士の休息』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。

じっくりと読むとまた落合氏が何を考えていたのか少し読み取れて良かったです。
Amazonの口コミ

めちゃめちゃ面白かった!読む前は「落合が映画?」とか思っていたのだが、読めば読むほど、彼が半端じゃない映画好きだということが分かる。本人も繰り返す通り、彼は映画は楽しめればいいというタイプの映画ファンなのだが、野球のエピソードなども織り交ぜながら緻密で時に理屈っぽいとさえ感じる独特の語り口で映画を語るので非常に説得力がある。ところでこの本、もしかしたら落合氏が自分で書いたんじゃないだろうか?だとすれば相当な才能だと思うし、聞き書きだとすればライターがこれを文字にするのはさぞ大変だったろうと思う。それぐらいきっちりとした文章だ。本書で彼が絶賛していたチャップリンの「モダン・タイムス」を見てみたが確かにあの映画は凄い。彼の言葉の通り、絶対に見るべき映画である。巻末の山田洋次との対談も楽しい。私は山田洋次の才能は認めるけどその人物にあまり好感が持てなかったのだが、この対談を読んでだいぶ印象が変わった。なぜか?それはぜひ、読んでいただきたい。
Amazonの口コミ

野球とは少し離れて、映画の話に終始している部分が面白かったです。映画、人生、アメリカ、日本、韓国、戦争と話は多岐にわたり、古い作品から最近の作品までよく見られているようです。野球に絡めるところが少しありましたが、それ以上に、哲学、さらに、歴史観。韓国ドラマを通しての知らない事象への興味の広がりや、また、”ミリオネア”等でも語られていた、小説、推理小説のこだわりもかなりある様子でした。その他印象に残ったことは。・「歴史に学べ、先人の知恵をつかめ」・その時代その時代により、掴む感性が違う。チャップリンや美空ひばりのすごさは、ある年齢になったときに感じた。・三船敏郎のかっこよさはすごい。・野球映画は好きではない。プレーのどこかに嘘がある。医者や刑事の映画もおそらく同じ。・アベンジャーズとプロ野球のオールスターとの比較。・007と寅さんのマンネリズムへの賛辞。映画は楽しくなければならない。(デビットニーブンの007カジノロワイヤルが出てきたのには、思わずニャついてしまった。)・未来への希望、映画私は、ロッテ時代の落合選手が好きでした。川崎球場にも何回か行きました。映画も好きでした。ベンハー、十戒、ウエストサイト物語。ご本人は、英語が苦手と言いながらも、よく調べられた丁寧な映画の解説。どの映画もいいところも悪いところもある、というスタンスで映画を見ている。いずれにしても、理屈抜きで、映画と少し野球と落合氏の歴史観を知れた、楽しい時間を過ごせた本でした。続きを読む
Amazonの口コミ

映画愛好家としての落合博満さん。野球を語るとき以上に、日本語の使い方にとても気を配っているようにうかがえて、専門外のことに対する謙虚さが伝わってきました。まあ、年代的に近いので、私にとっては見ている映画や感じ方も比較的近くて違和感のない映画解説本でした。何よりも映画について語りながらも、物事の本質に言及するあたり、凝り性なんでしょうね。
Amazonの口コミ

年令こそ違うが、ほぼ同時代を生きてきた人物の映画評は、うなずくところが多く共感を抱かせる。自分もそれなりに映画を見てきた世代と思っていたが落合氏の映画論ははるかに多くの映画を視聴しており、また氏の評論も本当に良く鑑賞された上での評論と言える。
Amazonの口コミ

みなさんの小説を読んだ感想が面白いですね!

おわりに

私が小説『戦士の休息』を読んだ感想や読みどころを、ネタバレ覚悟で解説いたしましたので、「面白い」と感じました方は、ぜひ閲覧ください。

次に読む予定の小説は『海は愛もなく冷たく』です。

アルレット・グレベルによって1972年に発表されたこのロマンス文学作品は、美しいフランス北西部ブルターニュ地方が舞台となります。

彼女はパリ生まれのジャーナリストで、活動の幅は広いですが、残念ながらこの作家の知名度は日本ではあまり高くありません。







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