埼玉県にお住いの30歳女性(不動産・建築系:営業)が2021年11月頃に「紙の本」で読んだ小説『むき出し』のレビューをご紹介します。
小説を見た感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、小説を見る前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
小説『むき出し』を読もうと思ったきっかけ
作者のお笑い芸人EXIT兼近さんを以前からテレビで見ていて、その人柄や発言などに好感を抱き、彼が執筆した小説を読んでみたいと思いました。
テレビで活躍していた中、過去の不祥事が週刊誌により世間に知らされた際、「テレビでは伝えきれない真実を小説にまとめて伝えたい」と言っていたのを聞き、小説が発売されたら必ず読もうを決めました。
何かと制限の多いテレビの中でも、他の出演者に比べていつも正直な意見を口にしている印象があったので、さらに正直な真実を小説で述べてくれているのだと確信していました。
小説『むき出し』の内容
1人の少年が、貧しい家庭に生まれ育っていく中で、さまざまな思いや葛藤と戦い、時にはもがき苦しみながらも大人になっていく物語です。
主人公は現在お笑い芸人をしている男性で、小学生時代から今まで歩んできた人生を振り返る形で描かれています。
家庭環境の問題などにより、いわゆる不良の道へ進み、犯罪にまで関わることになった主人公ですが、その時々で感じていた思いがリアルに赤裸々につづられています。
その人生を実際に経験した人にしか分からない素直な気持ちが、大人になっていくにつれて徐々に変化していくのが強く感じられる成長の物語です。
小説『むき出し』の作品情報
作品情報
- 出版社:文藝春秋
- 著者:兼近大樹
- 定価:本体1,600円+税
- 発行年月:2021年10月30日
- ページ数:255ページ
- ISBN:978-4-16-391451-0
- 言語:日本語
- 公式サイト:https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163914510
小説『むき出し』のあらすじ
小さい頃から、殴って、殴られるのが普通だった。誰も本当のことを教えてくれなかった。なぜ自分だけが、こんな目にあうんだろう――上京して芸人となった石山の前に現れる、過去の全て。
ここにいるのは、出会いと決断があったから。
小説『むき出し』の読みどころをネタバレ覚悟で解説
私がネタバレ覚悟で解説したい小説『むき出し』の読みどころは大きく3つです。
この小説の読みどころ
- 主人公の素直すぎる思いが胸に突き刺さる
- 不祥事をただの美談にしていないところに作者の覚悟が感じられる
- 教育格差や貧困問題などについて深く考えさせられる
主人公の素直すぎる思いが胸に突き刺さる
主人公が学校や地域で問題ばかり起こしていた時の気持ちが素直すぎるほどの表現で描かれていて、読んでいるうちに、行動は悪いことをしているのにどうか彼が救われて欲しいと自然と願ってしまいます。
問題ばかり起こすいわゆる不良の人の気持ちは、そうでないほとんどの人たちは分かろうともしていなかったことに気付かされます。
いけない行動をとりながらも、どうしていいか分からず苦しんでいる様子が目に浮かび、胸が苦しくなる場面もありますが、ラストに向かって、過去を受け入れながらも立派な大人として前を向いて歩いていく姿に、心を打たれます。
不祥事をただの美談にしていないところに作者の覚悟が感じられる
週刊誌で報じられた作者の過去の不祥事について書かれているということもあり、なんだかんだ美談のような仕上がりになっているのではないかと思う人も多いかもしれませんが、実際に読んでみると、決して美談にはしていないことが分かり、作者の強い覚悟が感じられます。
週刊誌で報道された内容以外にも、主人公が過去に起こしてきた良くない行動のすべてをリアルにつづっており、批判されることも覚悟で執筆したのが分かります。
批判があってもいい、小説によって議論が生まれることに意味があるという作者の気持ちが表れています。
教育格差や貧困問題などについて深く考えさせられる
物語は、1人の成長の物語ですが、教育格差や貧困問題について考えさせられる内容になっています。
作者と似たような環境で育った人は、共感できる部分や救われる部分も多くあり、逆に恵まれた環境で育った人が読むと、新しい気付きや問題意識が芽生えてきます。
主人公のように犯罪に関わってしまう人を減らすために大人にできることは何か、深く考えさせられる点も1つの読みどころです。
異なる環境で育った人同士が理解し合えるためにはどうずればよいか、考えるきっかけを与えてくれます。
小説『むき出し』を読み終わった感想
主人公が波乱の人生を歩んできた中で感じていた思いが胸に突き刺さり、複雑な思いと同時にラストには涙が出るような幸福感も感じられる素敵な小説でした。
小説は、あくまでフィクションとして描かれていますが、作者の人生と重ね合わせて読むことができるようになっていて、兼近さんをもっともっと応援したくなりました。
人生の中で何かに失敗しても、また前を向いて歩いていくことの素晴らしさを感じられ、本当に読んで良かったと思える小説です。
小説『むき出し』で印象に残った名言
私が小説『むき出し』を読んで特に印象に残った名言です。
「石山大樹」のセリフ
人を羨むな。今を恨むな。
小説『むき出し』の評価や口コミ
他の方が小説『むき出し』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
空が全然広くない片隅で私は思う。
描写。むき出しを、読み進めていくとある事に気が付いた。その時の景色が頭の中で映像として再生されている。季節感や体感温度、声、表情など全てが。むき出しは本で小説だけど、私の中では自分の目で映画を見ているように感じる。#むき出し#兼近大樹 pic.twitter.com/ebLjPj26Yi— AKI (@shochanhappy) September 3, 2022
兼近大樹の自伝的小説『むき出し』を読む。著者が、貧しい家庭だったとか、2回逮捕されてるとか、全然知らなかったけど、この本を読むと、著者の優しさや強さに、とても考えさせられる。勉強してこなかった著者が留置所で本に出会って目覚めたってとこに、本のチカラを感じる。#兼近大樹 #むき出し
— ふい 観る将 (@fkwaseda) August 29, 2022
むき出し #読了 しました
でも、人生は変えられる。
かねちーらしさ満載の小説でした
この作品と出会った人たちの特別な一冊になるといいなと思いました pic.twitter.com/D3pI9umYid— なな@読書垢 (@nana_ichigo15) November 13, 2021
おわりに
私が小説『むき出し』を読んだ感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説してきましたが、「面白い」と感じられた方はぜひ読んでください。
次に読みたいと思っている小説は『火花』です。
お笑い芸人が先輩芸人の伝記を書きながら成長していく物語ですが、又吉 直樹による小説なので読むのが楽しみです。