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小説のレビュー

【ネタバレ注意】小説『猫を抱いて象と泳ぐ』のレビュー!小説を見た感想は「読んだあとは長く小さな波が来続けるような読後感」

東京都にお住いの28歳女性(無職)が2023年2月頃に「紙の本」で読んだ小説『猫を抱いて象と泳ぐ』のレビューをご紹介します。

小説を見た感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、小説を見る前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。

この小説の読みどころ

  • マスターの死
  • 何もかも忘れてしまった老婆令嬢との再会
  • 眠るように息を引き取った最期

小説『猫を抱いて象と泳ぐ』を読もうと思ったきっかけ

ここ数年小説から離れていたところ、読解力の低下を感じるようになりました。

リハビリにと手に取った本が「猫を抱いて象と泳ぐ」でした。

作者である小川洋子さんの本はこれまで数冊読んだことがあり、どれも素晴らしく心惹かれる作品でしたので、きっとこれも楽しく読めるだろうとの安心感から選びました。

小川洋子さんの本のなかでも、こちらの本は特に表紙とタイトルに惹かれました。

淡いグレーともブルーとも言える背景に、小さな小人のような置物が映った表紙で、優しく、どこか寂しげで、思わず手に取ってしまいました。

それにタイトルが「猫を抱いて象と泳ぐ」とは、どんな内容の小説なのか全くわからず、読んでみたいとの期待をかきたてられました。

小説『猫を抱いて象と泳ぐ』の内容

この小説はチェスを題材にしており、主人公は唇に毛が生えた男の子です。

改造したバスに住むでっぷりと太った男性、「マスター」との出会いによって、主人公は類稀なチェスの才能の開花させます。

一方で、彼はチェス盤の下でしか指せないという特殊な感性を持っていました。

主人公が少年になる頃、マスターは突然亡くなってしまいます。

それをきっかけにして彼は地下深くにある非公式のチェスクラブで働くようになりました。

そこで彼はからくり仕掛けのチェス人形「リトル・アヒョーリン」の中に入って、人形を操り、「リトル・アヒョーリン」としてチェスを指すことになります。

チェスクラブで働くなかで、鳩を肩に乗せた女性「ミイラ」と静かな愛を紡ぎ、操り人形の元所有者である「老婆令嬢」と美しい棋譜を作り上げ、彼は地下深い世界でその地位を確固たるものにしていきました。

しかしある事件がきっかけで、主人公はチェスクラブを出てしまいます。

次に得た仕事は老人ホームでのチェス指しでした。

そこで「リトル・アヒョーリン」は最後の時間を過ごすことになります。

この小説は、チェスの盤面と同じように、物語が進むにつれてどんどん寂しくなっていきます。

終わり方も、寂しくとても静かなものでした。

小説『猫を抱いて象と泳ぐ』の作品情報

作品情報

  • 出版社:文藝春秋
  • 著者:小川 洋子
  • 定価:本体1,780円(税込)
  • 発行年月:2011年07月10日
  • ページ数:311ページ
  • ISBN:B009A49B6G
  • 言語:日本語
  • 公式サイト:https://www.bunshun.co.jp/pick-up/nekowodaite/

小説『猫を抱いて象と泳ぐ』のあらすじ

「大きくなること、それは悲劇である」。

少年は唇を閉じて生まれた。

手術で口を開き、唇に脛の皮膚を移植したせいで、唇に産毛が生える。

そのコンプレックスから少年は寡黙で孤独であった。

少年が好きだったデパートの屋上の象は、成長したため屋上から降りられぬまま生を終える。

廃バスの中で猫を抱いて暮らす肥満の男から少年はチェスを習うが、その男は死ぬまでバスから出られなかった。

成長を恐れた少年は、十一歳の身体のまま成長を止め、チェス台の下に潜み、からくり人形「リトル・アリョーヒン」を操りチェスを指すようになる。

盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、いつしか「盤下の詩人」として奇跡のような棋譜を生み出す。

小説『猫を抱いて象と泳ぐ』の読みどころをネタバレ覚悟で解説

私がネタバレ覚悟で解説したい小説『猫を抱いて象と泳ぐ』の読みどころは大きく3つです。

この小説の読みどころ

  • マスターの死
  • 何もかも忘れてしまった老婆令嬢との再会
  • 眠るように息を引き取った最期

マスターの死

マスターが亡くなるシーンは序盤の見どころのひとつです。

主人公は生涯を通して「大きくなること、それは悲劇である」という考えを持ち続けますが、この考えを決定的にした出来事がマスターの死です。

マスターはあまりに太りすぎていたので、住居である改造バスから遺体を運び出すことができませんでした。

そこで改造バスを重機で破壊して遺体を運び出すことになります。

マスターとの思い出の日々が無残にも壊されていく描写は、主人公の心を直接痛めつける描写とも捉えられるほど残酷で、惹き込まれます。

何もかも忘れてしまった老婆令嬢との再会

老人ホームで老婆令嬢と再会するシーンは目頭が熱くなります。

チェスクラブで美しく華麗なチェスを指し合い、クラブの脱出を後押ししてくれたあの老婆令嬢。

彼女は「リトル・アリョーヒン」のことも、自分が今どこにいるのかも、チェスの指し方さえ忘れて主人公の前に姿を表しました。

老人ホームへ行くことを勧めてくれたのは老婆令嬢でした。

もし老婆令嬢が、自分もいつかあの老人ホームへ入るのだと考えたうえで主人公に紹介したのだとしたら、主人公のことをよほど信頼していたのだと考えられます。

そんな老婆令嬢と主人公の老人ホームでの交流は胸に重くくるものがありました。

眠るように息を引き取った最期

見どころとしてラストシーンは外せません。

主人公は一酸化炭素中毒で眠るように息を引き取ります。

身体に馴染んだ「リトル・アヒョーリン」の中で、不慮の事故により、本人も気がつかないうちに亡くなってしまうのです。

それはチェスの終盤の寂しさ、静けさを思い起こさせるような死でした。

彼が亡くなった直後に、長く手紙のやり取りをしていたミイラが会いにくるところも、切なさを助長させます。

彼の一生はチェスそのものであったのだと思わせるようなラストシーンでした。

小説『猫を抱いて象と泳ぐ』を読み終わった感想

この小説を読んでいる間、私もこんな静かな世界に生きられたらなと考えていました。

全体を通してとても静かな物語です。

物語なので、起承転結や盛り上がるシーンなどはあるのですが、それでも静かな印象を受けます。

読んでいる最中は心に大きな波風は立たないのに、読んだあとは長く小さな波が来続けるような読後感です。

また、一番好きになった登場人物はマスターでした。

登場時はこのでっぷり太った人が一体何をするのかとちょっとした怖さがありましたが、読み進めていくにつれて、身体の大きさは安心の大きさに変わり、なんでも受け止めてくれる優しさと思慮深さに魅了されました。

小説『猫を抱いて象と泳ぐ』で印象に残った名言

私が小説『猫を抱いて象と泳ぐ』を読んで特に印象に残った名言です。

「老婆令嬢」のセリフ

自分などというちっぽけな存在にこだわっていたら、本当のチェスは指せません。

小説『猫を抱いて象と泳ぐ』の評価や口コミ

他の方が小説『猫を抱いて象と泳ぐ』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。

おわりに

私が小説『猫を抱いて象と泳ぐ』を読んだ感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説してきましたが、「面白い」と感じられた方はぜひ読んでください。

次に読みたいと思っている小説は『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』です。

東野 圭吾による世界中を襲ったコロナウイルスの蔓延により頓挫。町は望みを絶たれてしまう。そんなタイミングで殺人事件が発生。非常に興味深いミステリーです。







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