愛知県にお住いの39歳女性(サービス系:会社員)が2022年6月頃に「映画館」で見た映画『死刑にいたる病』のレビューをご紹介します。
映画を見た感想や見どころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、映画を見る前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
映画『死刑にいたる病』を見ようと思ったきっかけ
もともと白石和彌監督作品が好きで、近年の作品では「孤狼の血」「ひとよ」「凪待ち」などもとても良かったので、この作品も気になっていました。
私はバイオレンスシーンやグロシーンには比較的耐性がある方だと思いますが、それでもこの作品にはトラウマ級の直接的シーンがあるといくつかのレビューを拝見して、映画館の大画面で観るか少々ためらったのですが、むしろそういった描写ゆえ、地上波放送は難しいとのレビューも拝見し、鑑賞を決めました。
確かに、冒頭からなかなかキツいシーンがありますが、白石監督作品ファンの方なら耐え得ると思います。
映画『死刑にいたる病』の内容
「死刑にいたる病」は、作家・櫛木理宇さんの原作本を、「凶悪」「孤狼の血」などで知られる白石和彌監督が映画化した作品です。
24件もの殺人容疑で逮捕され死刑判決を受けた榛村を阿部サダヲが静かな狂気で演じます。
何処にでもいるような大学生・雅也のもとに世間を震撼させた連続殺人犯・榛村から1通の手紙が届くところから物語はスタートします。和製ハンニバルとも言えるようなその静かな狂気が、じわじわと、しかし確実に雅也を侵食していく過程は寒気を覚えるような恐怖です。
映画『死刑にいたる病』の作品情報
作品情報
- 監督:白石和彌
- 脚本:高田亮
- 原作:櫛木理宇『チェインドッグ』
- キャスト/出演者:
- 阿部サダヲ
- 岡田健史
- 岩田剛典
- 中山美穂
- 宮﨑優
- 主題歌:-
- 日本公開日:2022年5月6日
- 上映時間:129分
- 公式サイト:https://siy-movie.com/
映画『死刑にいたる病』のあらすじ
稀代の連続殺人鬼である榛村大和から手紙を受け取った大学生の筧井雅也。そこには「罪は認める。しかし最後の1件だけは冤罪だ。最後の1件を誰が行ったかを調べてほしい」と認められていた。中学生の頃、近所でパン屋を営んでいた榛村に恩を感じていた雅也は手紙の内容を理解して、独自の調査を始めることになる
映画『死刑にいたる病』の予告編
映画『死刑にいたる病』の見どころをネタバレ覚悟で解説
私がネタバレ覚悟で解説したい映画『死刑にいたる病』の見どころは大きく3つです。
この映画の見どころ
- 榛村のサイコパスとしての本質とは?
- 自己肯定感とマインドコントロール
- 魅力的なキャスティング
榛村のサイコパスとしての本質とは?
榛村のターゲット層や犯行手口などは一貫しており、自らの強い美学に基づいて殺人を犯す秩序型殺人犯とされます。
そんな榛村から「罪は認めるが、最後の事件は冤罪だ。犯人は他にいることを証明してほしい」と依頼される雅也。
最後の1件の被害者は明らかに年齢も殺害方法も榛村のセオリーから外れていることに気付いた雅也は独自に調査を進めます。
榛村は秩序型殺人犯として強調され描かれますが、それこそがまさにミスリードであるといえます。
一連の殺人事件以前に彼が犯していた犯行を振り返ると、少年時代の幼女殺人未遂や、青年期の金山兄弟への支配などはその手口に類似性はなく、いずれも被害者の心身を崩壊させるほどの「残虐性」という点においてのみ共通しています。
そして彼が冤罪だとする被害者もまた、極度の潔癖症であるという彼女にとって最も残虐な方法で殺害されていますが、そこに及ぶまでの甚振り方には一貫性がありません。
そう、彼は如何様にも人を残虐に扱えるのです。つまり、彼のサイコパスとしての本質は、20名以上もの未成年を「捨て石」として殺害したことです。
自分が死刑にいたるほどの不治の病であることを自覚している彼は、獄中からをも他人を操るこの「シナリオ」を完成させるために一連の連続殺人事件を演出したに過ぎません。
自己肯定感とマインドコントロール
自己肯定感とは、ありのままの自分自身を肯定する感覚のことです。
榛村は、自身の描く「シナリオ」の重要キャストとして雅也を選びました。雅也は、自分が当時まだ中学生であった為に榛村のターゲットから外れたと考えますが、それは違います。
一連の殺人事件でターゲットとされた被害者はいずれも、黒髪で制服を校則通りに着る真面目で清純そうな優等生タイプの少年少女たちです。
雅也のように家庭環境に問題があるようなエピソードは描かれていません。榛村は雅也の心の隙間に如何にして入り込んでいくのか。彼にとってそれはいとも容易いことです。
榛村の恐ろしいまでの人心掌握は、看守とのやりとりで描かれる主従関係の逆転からもわかります。
雅也が榛村に魅せられ深淵に沈んでいく心理的、映像的描写はこの作品の最大の見どころです。それはどこか他人事ではないような気がして寒気を覚えます。
魅力的なキャスティング
希代の連続殺人鬼・榛村を演じた阿部サダヲ、鬱屈した陰キャ大学生・雅也を演じた岡田健史は言わずもがな、脇を固めるキャスティングも素晴らしいです。
特に好演が光るのは、雅也の同級生で、ある意味もう1人の主人公とも言える灯里を演じた宮﨑優。
地味目なビジュアルと、周りの空気に過敏そうな少しおどおどとした雰囲気は、この作品の伏線となっていますが、自然体かつ大胆に演じており、宮﨑優の女優としての今後の活躍がとても楽しみです。
また、雅也の父を演じた鈴木卓爾も素晴らしいです。
まさに空気感の演技で、雅也の父という人となりを確実に体現しています。
映画『死刑にいたる病』を見終わった感想
「死刑にいたる病」は、鑑賞後に他の人がどんなふうに考察したか語り合いたくなるような作品です。
また、映画は原作とは違った展開にしているため、原作を読んで理解を深めたくなります。
白石監督ならではの猟奇的なシーンがあるため、観る人を選びますが、自分とは遠い世界のようで身近にあり得てもおかしくない気にもさせます。
私が特に印象に残ったのは、阿部サダヲの目です。
わずかな光も感じない漆黒の目は、引き込まれたらもう二度と戻れないような深海を感じさせます。
「自分らしさ」や「人と繋がること」の様式が変化しつつある現代社会において、強いメッセージ性を感じる作品です。
映画『死刑にいたる病』で印象に残った名言
私が映画『死刑にいたる病』を見て特に印象に残った名言です。
「榛村大和」のセリフ
凄いじゃないか
映画『死刑にいたる病』の評価や口コミ
他の方が映画『死刑にいたる病』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
今、映画「死刑にいたる病」を観て来ました。素晴らしかったです。阿部サダヲ氏もながら、岡田健史、宮崎優、中山美穂、etc…。皆それぞれ良かったです。誰もがイカれてて、もつれた糸が解れていく過程が、ホラーでした。満足です‼︎
— 法螺夢幻 (@horamugen130) July 10, 2022
この日さ映画『死刑にいたる病』観てきたんだけど俳優さん女優さん皆の演技力が凄すぎて唖然とした。あと怖すぎ。今まで見たどのホラー映画よりこえーよ。感想がことごとく「これが本物のサイコパスか」「背筋が凍る」「血の気が引く」「R18にした方がよくない?」「チビる」みたいなのしか出てこない pic.twitter.com/JV6WvCNUD4
— 褪せ人の遊燦々 (@yuusansan322) July 11, 2022
映画『死刑にいたる病』ですが、お話の巧みさはもちろん、人物の印象的な映し方で「だれの言ってることが正しいのか?」とわからなくなってくるのがとても気持ち悪い(いい)です。ゴア描写とは違う意味で背筋や足元がぞわぞわと落ち着かないので、映画館で観た方が逃げられなくていいかもと思います。
— 千里(夏) (@sen169) June 20, 2022
おわりに
私が映画『死刑にいたる病』を見た感想や見どころをネタバレ覚悟で解説してきましたが、「面白い」と感じられた方はぜひ見てください。
次に見たいと思っている映画は『ベイビー・ブローカー』です。
白石監督と並んで好きな監督である是枝裕和監督。こちらもメッセージ性のある社会派作品で気になっています。