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小説のレビュー

【ネタバレ注意】小説『流浪の月』のレビュー!小説を見た感想は「当たり前の自分の物差しで人に暴力振るってない?」

奈良県にお住いの32歳女性(IT・通信系:ライター)が2021年1月頃に「紙の本」で読んだ小説『流浪の月』のレビューをご紹介します。

小説を見た感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説しておりますので、小説を見る前に面白いのか知りたい方、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。

この小説の読みどころ

  • 更紗のDV彼氏の闇に落ちていく感じが生々しく描かれている
  • 他人の善義って、たまに暴力になるよね。
  • 文が自分の真実を話す描写が、辛くて、儚くて、ずっと一人で抱えてきたんだと思うと胸が苦しくなる

小説『流浪の月』を読もうと思ったきっかけ

たまたま本屋大賞のユーチューブを見ていて、過去の本屋大賞作品を調べていました。

前年の本屋大賞が流浪の月で、内容を読むと自分の好きそうな雰囲気だったので図書館で借りて読みました。

当時読書を始めたばかりであまり本に詳しくなかったので、まずはベタな有名作品からと思い、手に取りました。

本屋大賞は書店員さんが選ぶので信用できると思ったからです。

また表紙のアイスクリームが魅力的で、この本にどんなふうにアイスクリームが関わってくるのか知りたくなったからです。

小説『流浪の月』の内容

「事実と真実は異なる」という事を痛感する一冊です。

親戚の子供に体にいたずらされる日々を送る更紗を、助けて家に泊めた文。だけどそれは世間的には「誘拐」であり文は19歳で捕まりました。

そんな二人は大人になり再会します。

「誘拐犯」と「被害者女児」という事実を突きつけられる中、二人の再会によって運命が大きく変わります。

作品の最後には「ロリコン」だと思われている文の真実が明らかになります。

文は下半身が成長しない病気だったのです。

「誰とも繋がれない」文がたどり着く、更紗と共に生きる事。

更紗と文はお互いの傷を二人で背負いながら「言葉にできない関係性」で共に生きていきます。

二人にとって一緒に過ごした過去は、傷から逃れた大切な日々だったのです。

「なにが事実でなにが真実なのか」私たちが考える当たり前を、一度考えさせられる作品です。"

小説『流浪の月』の作品情報

作品情報

  • 出版社:東京創元社
  • 著者:凪良 ゆう
  • 定価:本体1,500円+税
  • 発行年月:2019年8月30日
  • ページ数:335ページ
  • ISBN:978-4-488-02802-2
  • 言語:日本語
  • 公式サイト:http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488028022

小説『流浪の月』のあらすじ

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人間を巻き込みながら疾走を始める。

小説『流浪の月』の読みどころをネタバレ覚悟で解説

私がネタバレ覚悟で解説したい小説『流浪の月』の読みどころは大きく3つです。

この小説の読みどころ

  • 更紗のDV彼氏の闇に落ちていく感じが生々しく描かれている
  • 他人の善義って、たまに暴力になるよね。
  • 文が自分の真実を話す描写が、辛くて、儚くて、ずっと一人で抱えてきたんだと思うと胸が苦しくなる

更紗のDV彼氏の闇に落ちていく感じが生々しく描かれている

更紗の彼氏、亮は実家が農家で長男で跡継ぎで、会社ではきっと良い立場にいるんだと思います。

更紗の過去について「可哀そうな子」として扱う亮に更紗はいつも心の中で疑問を感じています。

違うよと言えば言うほど、「洗脳されている」と可哀そうな目で見られます。

そんな亮が更紗と文の再会を知り、暴力を振るいます。

実は亮は以前の彼女にも暴力を振るっていたんです。

亮の性格は、更紗が文を想う程闇に落ちていき、最終的には自殺未遂をしますが、それを更紗に階段から落とされたと警察に言います。

DV男の闇落ちの感じが生々しく描かれています。

他人の善義って、たまに暴力になるよね。

更紗が働くお店の店長はすごく優しくて従業員思いで、更紗がDVに遭っているかもしれないとわかったときは優しく思ってくれます。

文との距離を縮める更紗に「洗脳されている」と哀れみます。

「みんな、更紗さんのことが心配で言ってるんだよ。更紗さんのことを想って言っているんだよ」と言います。

ですが更紗と文は世間が思っている関係ではありません。

でも「誘拐犯」と「被害者」という関係を当たり前に思う店長は私たちの代表でもあります。

人の善意は時に暴力になる、ということを深く考えます。

文が自分の真実を話す描写が、辛くて、儚くて、ずっと一人で抱えてきたんだと思うと胸が苦しくなる

文は下半身が成長しないのですが、それをずっと抱えて生きてきました。

更紗を誘拐したのも、もしかしたら大人の女性相手にだけ何も感じなくて自分はロリコンで子供に対してはそういう感情が沸くのではないかと思ったからです。

更紗も文のことをずっとロリコンだと思っていました。

文が二回目の警察に連れ去られた後、自分は名前まで変えて生きてきて、ロリコンでもないことをわかっているのにまた疑われて更紗の前で錯乱します。

そして文は更紗の真実を話します。

男性と繋がるのが嫌な更紗と、誰とも繋がれない文、二人は恋人関係でもなく「言葉にできない関係」で生きていくのです。

小説『流浪の月』を読み終わった感想

自分たちが持っている「当たり前」について考えさせられるきっかけになりました。

自分も善意と思って人を傷つけていないか?と考えました。

色んな事件が毎日起きるけれど、自分が知っているのはニュースで報じられる「事実」であって「真実」は本人にしかわからない、ということを認識しました。

ラストの文の告白は、鳥肌が立ちました。

まさかそんなラストが待っているとは思わず、更紗の気持ちになり号泣しました。

もしかしたら世の中には更紗と文みたいな関係の人っているのかもと思いました。

小説『流浪の月』で印象に残った名言

私が小説『流浪の月』を読んで特に印象に残った名言です。

「更紗」のセリフ

「事実と真実は当人にしかわからない」

小説『流浪の月』の評価や口コミ

他の方が小説『流浪の月』を見てどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。

小説『流浪の月』を読もうと思ったきっかけについての口コミ

ほかにも当メディアで独自に取得したアンケートから、小説『流浪の月』を見ようと思ったきっかけをご紹介します。


小説『流浪の月』を読もうと思ったきっかけ

22歳女性(ライター)


私はTwitterにて読書アカウントという、読書の感想や読書好きあるあるなどを投稿するアカウントを持っています。そのタイムラインにはフォローしているみなさんの読了した本が流れてくるので、次に読む本を選ぶ上で参考にしています。今回読んだ『流浪の月』も読書アカウントのタイムラインで頻繁に流れてきていたため、気になっており、手に取りました。また、作者である凪良ゆうさんは最近話題の作家さんだから、ということも理由のひとつです。

小説『流浪の月』の読みどころについての口コミ

ほかにも当メディアで独自に取得したアンケートから、小説『流浪の月』の読みどころをご紹介します。


名前のない関係

22歳女性(ライター)


更紗と文は恋人でもなく友達でもなく家族でもありません。そんなふたりが結ぶのは、この世にまだ名前のない関係。しかし、現実世界でもこのような関係性は存在しているのでは?と考えさせられます。現在の日本では恋愛スタイルや友愛スタイルが多様化しており、ポリアモリーやパンセクシャル、アセクシャルなどのセクシュアリティにもようやく名前がつきました。その一方で、「異性と仲良くしていると、周りにすぐに恋人だと勘違いされる」、「同性婚を法制化してほしい」「子どもはほしいが、自分は同性愛者だ」などの悩みを抱える人々も少なくありません。私は今作を読み、人間のセクシュアリティなどの多様性について、改めて考えさせられました。

裁かれない性暴力

22歳女性(ライター)


私は性暴力の描写がある小説が苦手です。しかし、性暴力というのは現実にも存在している犯罪です。そこから目を背けることはできません。考えさせられる小説にはしばしば性暴力のシーンが出てきます。今作では、小学生女子が中学生男子に体を触られるという性暴力を受けますが、それを周りに言うことができずにいます。自分自身に置き換えてみても、性暴力を受けているという話を誰かにするのは非常にハードルの高いことです。私は今作を読んで、性暴力を受けた人が安心して告発でき、保護され、相手に謝罪や賠償金を請求できる社会になってほしいと、改めて思いました。現行の裁判では、被害者が、自分が受けた性暴力の詳細を自分の口から述べなくてはなりません。それは非常に酷なことだと思います。

人間の先入観と多様性

22歳女性(ライター)


誰かが誘拐されたと聞いて、「誘拐されたんだから、性的なことを無理やりされたに違いない」と思ってしまうのは自然なことかもしれません。しかしながら、今作を読むとそれすらもある種の性暴力なのかもしれないと思わされます。今作では、実情を知らずに周りに誤解された更紗が歯痒い思いをしていたことがひしひしと伝わってきます。先入観というものの恐ろしさを物語っています。

また、文は性器の大きさが子供の大きさのまま止まってしまうという病気を持っていました。私はそのような病気があることを初めて知りました。人間の心の多様性はよく語られていますが、体にも多様性があるということを再認識させられました。これから、他者の身体的特徴を馬鹿にしないことはもちろん、自分が知らない病もあるということを念頭に置いて生きていきたいです。

小説『流浪の月』を読み終わった感想についての口コミ

ほかにも当メディアで独自に取得したアンケートから、小説『流浪の月』を読み終わった感想をご紹介します。


小説『流浪の月』を読み終わった感想

22歳女性(ライター)


性暴力、先入観、名前のない関係、セクシュアリティ、身体的特徴と病など、私が関心のあるテーマが色々と盛り込まれていたので、非常に読み応えのある作品でした。また、ストーリー自体もおもしろく、読みやすい文章でした。これからもジェンダー、セクシュアリティ、多様性、差別などについて個人的に調べていきたいと思いました。また、私も昔は「異性同士がふたりで家で遊ぶイコール、ふたりは恋人関係」だと思い込んでいました。しかし今は多様性の時代なのでそうとは限らないと思い直しました。さらに、先の例で言えば「男性側は女性に好意を持っていたが、女性側は男性を友人として見ていた」というような事態も起こり得ます。「多様性、多様性」と言っていれば良いわけではなく、多様性ゆえに人々の対人関係も複雑化していることを念頭に置いて生活していきたいと感じました。

おわりに

私が小説『流浪の月』を読んだ感想や読みどころをネタバレ覚悟で解説してきましたが、「面白い」と感じられた方はぜひ読んでください。

次に読みたいと思っている小説は『同志少女よ、敵を撃て』です。

戦争中に、子供ながら戦士になる少女と上官の話ですが、2022年本屋大賞受賞作品でもあるので、次に読むのが楽しみです。







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