神奈川県にお住いの36歳男性(福祉作業所農作業員)が2022年8月頃に読んだ『インド残酷物語 世界一たくましい民』のレビューをご紹介します。
本書の概要や内容をわかりやすく要約してまとめておりますので、書籍を読んで学んだことや感想、評価や口コミが気になっている方は参考にしてください。
目次
『インド残酷物語 世界一たくましい民』を購入したきっかけ
この本の紹介文に書かれている、「私達貧乏人には、金も地位も何にもないけど、マリヤーデ(名誉・誇り・礼節)を持つ事はできるのよ」という、部屋の掃除婦の女性の言葉が印象的だったので読んでみる事にしました。
お金も地位もあるけれど名誉や誇りを持たない人がいる一方で、どんなに苦しくても、名誉や誇りを持つ事でたくましく生きていく人々の事を思うと、果たしてどちらが人として有意義な人生を送っているかと考えてしまいます。
経済的に厳しい国の方々よりも良い暮らしをしている人が多い我々日本人も、お金と地位を求めると同時に、名誉や誇りを持つ事を目指すと、何を目的にしていいか分からない日々の生活に目的が出来て良いのではないかと思いました。
このように、本の紹介文を読んだだけで何か私の中に響いてくるものがあり、本書を読んでみようと思い、手に取りました。
『インド残酷物語 世界一たくましい民』の概要
まず、衝撃を受けたのは、著者の次のような文章です。
夜行列車に乗るためには、プラットフォームを埋め尽くすように横たわっている何百人という貧しい人たちをまたがないといけなかった。(P.8より引用)
人々が、駅のホームで電車待ちをして椅子に座っているのなら分かります。
しかし、プラットフォームを埋め尽くすように横たわっている人が何百人もいるというのはどういう事なのか、驚きました。
その光景を想像してみると、その異常さがよく分かるのではないかと思います。
この点でも、インドの現状を垣間見る事が出来ましたし、GDP世界6位の国でありながら、このような光景の広がっている国の在り方には、深い興味を覚えました。
このように、日本にいるだけでは分からないインドという国の光景と現状について知る事が出来る貴重な一冊であり、内容としても一読の価値のある情報が多いと思いました。
『インド残酷物語 世界一たくましい民』の基本情報
基本情報
- 出版社:集英社
- 著者:池亀 彩
- 定価:本体880円+税
- 発行年月:2021年11月17日
- ページ数:272ページ
- ISBN:978-4-08-721191-7
- 言語:日本語
- 公式サイト:https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-721191-7
『インド残酷物語 世界一たくましい民』の目次
目次
- はじめに
- 第一章 純愛とiピル
- 第二章 水の来ない団地で
- 第三章 月曜日のグル法廷
- 第四章 誰が水牛を殺すのか?
- 第五章 ウーバーとOBC
- おわりに
『インド残酷物語 世界一たくましい民』のYouTube(ユーチューブ)
『インド残酷物語 世界一たくましい民』についてYouTube(ユーチューブ)でわかりやすく解説してくれている動画がないか調べてみました。
残念ながら本書を紹介しているYouTubeチャンネルはなかったため、本ブログにて要点をまとめてお伝えできればと思います。
『インド残酷物語 世界一たくましい民』から学んだことの要約とまとめ
『インド残酷物語 世界一たくましい民』から私が学んだポイントは大きく3つの内容です。
私が学んだこと
- 紀元前13世紀から続くカースト制度の不思議
- 字が読めない人が多くてもGDP世界6位
- 水道の蛇口がなく水が出ない家がある
その中でも、印象的だったシーンとして以下のものがあります。
ある時、ストリート演劇で人権問題を伝える活動をしていた所、主人公のダリト(被差別階級)の女性が最も虐げられ涙を流すシーンで、観客たちのダリトは大笑いしたのだという。(中略)本来は、同情し共感する場面で、ざまあみろと笑ったのだ。
その時、彼らはダリトの感情を回復する事が、社会経済的な状況を向上させる事と同じか、あるいはそれ以上に大事な事だと悟ったという。(P.204より引用)
これを読んで、同情すべき所で笑うという行為の異常さが際立って記されていますが、これを読んだ時、私も同じような感情を持っている事に気付きました。
ニュースでウクライナの惨状を見ている時に、建物が大きく壊れているのを見て、すごいと思ってしまいましたし、人殺しの道具である戦車が人間を殺すために大砲を打つシーンを見て、迫力があってすごいなと思ってしまった事があります。
そこで繰り広げられているのは戦争ですが、部外者としての私は、泣き叫んでいるウクライナの人々に同情しても、どこか安心感があり、心の底から何とかしてあげたいと思っても、その感情がどこか薄っぺらいのです。
その時、ダリトの女性を見て同情できない方々と同じような性格を自分に発見し、自分もいい人ではないな、とショックを受けました。
このような発見は、この本を読んでいて自分に起こった大きなショックでした。
紀元前13世紀から続くカースト制度の不思議
インドと言えば、カースト制度が有名ですが、あるカーストは、あるカーストからしか水を受け取る事が出来ないというルールがあったり、このカースト同士なら共に食事をする事が出来るという事が決まっていたり、中々興味深かったです。
しかし、水の受け渡しがそこまで厳格に決まっていたら普段の生活が不便ではないのだろうかと思いましたし、皆が一緒に食事を食べられないというのは、残念な思いがありました。
社会的にそのように決まっているのでしょうが、そこまで細かく制限を設けて、そのようにカーストを細かく区分しておきながら、それで社会が回っているというインドの制度には興味を持ちました。
制度にメリットがあるから続いているのでしょうし、紀元前13世紀から続いているという事もあり、カーストはすごいな、と思いました。
字が読めない人が多くてもGDP世界6位
インドの識字率は、77.7%です。
インドの人口が14億人ほどですから、3億2000万人ほどの方々は、字が読めないという事になります。
1950年代は、識字率が18%だったという事ですから、その点においては、発展していると言えそうです。
著者も、字が読めない方々と接する機会があり、その時の私見が本書で述べられているのですが、字の読めない方々は、数字が読めないので時計が読めない、だから今何時位なのか分からないそうです。
そして、スーパーなどで値札を見て、値段を判断する場所には行けないのだそうです。
これはかなり大変な事であり、日常生活が大変だろうなと思わされたエピソードですが、このような生活をしている方々が3億2000万人もいるという事を考えると、それはそれですごい国だなと思いました。
スーパーの値札や時計の読み方などは、それほど苦労しなくてもすぐに覚えられそうですが、毎日仕事と家事に追われている方々には、一定の時間座って何かを学ぶような余裕はないそうです。
そのような部分からも、インドという国の実情が見えてきそうで勉強になりましたし、そのような方々がいる中でもGDPで世界6位に上りつめている現状のインド社会は、かなりすごいものがあるなと思いました。
水道の蛇口がなく水が出ない家がある
インドの一般的な労働者階級の家の中には、水道の蛇口がない家がある。コンクリートの壁には穴が空いているだけで、水道管も蛇口もない。「水道管は来ていないんですよ。毎日、団地の外にひとつだけある共同水道から水を汲んでくるんです」(P.83より引用)
コンクリート剥き出しで水道管の来ていないこの家に来てから、それでも彼らの生活はずいぶん楽になったそうです。
水道が使えず、コンクリート剥き出しの家に住む事で生活がよくなった、というこの労働者の生活もかなり厳しいものがあったのではないかと思いますし、その様子を想像すると自分の生活の恵まれている事に思い至ります。
今の日本では、電気ガス水道は当たり前にそろっていますが、そのあたり前のありがたさを認識する機会があると日常はより豊かになり、多くの事に感謝できるのではないかと思います。
インドの生活を知る事で、逆に自分の生活を知る事になるというのは、とても大切な意味を持っていると思いますし、それはこの本を読んでよかった部分です。
その後、その方の部屋には水道が通ったという事ですが、風呂場で水を使うと居間まで水が流れてくるそうで相変わらず大変なようです。
そういった意味で日本の建築は優れていると思いますし、個人的には、日本にある優秀な当たり前の存在に思い至りました。
『インド残酷物語 世界一たくましい民』の感想
洗濯機を使えば効率よく簡単に洗濯ができますが、インドでは手で洗濯をした方が良いそうです。
洗濯機の場合、手で洗濯するよりも水も多く使うし、電気代、洗剤代などお金がかかるからであり、総合的に考えると手洗いの方が良いそうです。
個人的には、洗濯機の方が圧倒的に便利で効率がよく、人件費の面からみても安上がりだと思うのですが、インドではそうはならないという所に、注目すべきポイントがあると思いました。
そして、このような点でも日本の優れたシステムに思い至りますし、インドでの一般的な生活の大変さを知る事が出来て得る物もあったと思います。
『インド残酷物語 世界一たくましい民』の評価や口コミ
他の方が『インド残酷物語 世界一たくましい民』を読んでどう思われているのか、評価や口コミを調べてみました。
池亀彩さんの『インド残酷物語 世界一たくましい民』を読み始める。インド本には慣れているはずなのに「はじめに」を読んだだけで号泣。はずい。 pic.twitter.com/nqO3AzTMin
— ジムの哲人(元編集者)先生の円盤出たら買います。 (@gym_no_sophist) July 28, 2022
インド残酷物語
世界一たくましい民 池亀彩
台湾と日本でひしひしと格差社会を実感してきたが、インドのカーストは凄まじかった。。
名誉殺人(殺人)というのは、
聴いて知ってはいたが、詳しくは知らなかったので衝撃を受けた。 pic.twitter.com/n2UnuqlSKH— 房田 (@gf_dni) November 16, 2021
池亀彩さんの『インド残酷物語 世界一たくましい民』 #読了
知らなかったことも多く、衝撃を受けました。
インドで起きている真実。カーストの残酷さ、そこから生まれる悲劇。
ただそれだけではなく、恐ろしい社会の中でも、賢く、強く生きている人たちの姿に、多くのことを学ばせていただきました。 pic.twitter.com/cSnZLpeOF1— 中我生 直佑 (なかがき なおゆき) (@0711Naoyuki) May 12, 2022
みなさん本書を読んで学んだことが多いみたいですね!
おわりに
インドの人々の階級が個人的に興味深く、得る物がありました。
バラモン 司祭階級
クシャトリア 王族・武士階級
ヴァイシャ 商人階級
シュードラ 農民・サービス階級
部族民・不可触民(ダリト)
上から順に上位階級に位置していますが、インドの階級は王族の上に司祭が配置されており、日本の階級制度とは大きく異なります。
日本では、士農工商が採用されていましたが、インドの階級とは、農業、商人の位が異なりますし、この事からも国によって職業別の身分が大きく異なっていた事が分かります。
しかし、司祭が王族より上というのは、他の国にも見る事のできない特殊な階級制度だと思いますし、その点には興味が湧きました。
王族というのは、普通、人々を統治する位を持つ人々ですし、司祭とは、それを補佐する人々のはずです。
補佐する人々がその上を行くという事は、司祭階級皆で話し合いを行い、意思決定を成し遂げようとする合議制のようなものなのでしょうか。
神に仕える人々が、神からの言葉を直接伝えるというような役割であるのならば、王族の上に神がいる事になり、それなら形は整うような気がします。
いずれにしろ、インドの特徴的なカースト制度は、特色のある面白い制度だと思いました。
次に読みたいと思っている本は『英国紳士が見たニッポン A State of Mind』です。
英語の勉強のための本ですが、面白そうだったので読んでみたいと思いました。
この本では、日本人である私がインドの生活について読みましたが、イギリス人が日本を見たらどうなるのか、その点が気になりました。
やはり、奇妙に思える習慣や、ここがおかしい、と思う事はあるのでしょうか。
外から見た人にしか分からない、日本という国についての意見を読んでみたいと思いました。